日本経団連タイムス No.2998 (2010年5月27日)

スリンASEAN事務総長講演会開催

−「アジア総合開発計画と日本とのパートナーシップ」をテーマに
/計画策定の進捗状況などで説明聞く


講演するスリンASEAN事務総長

日本経団連は20日、経済広報センターとの共催で、東京・大手町の経団連会館にスリン・ピッスワンASEAN事務総長を招き、「アジア総合開発計画(CADP)と日本とのパートナーシップ」と題した講演会を開催した。講演会には日本経団連会員企業から約140名が参加し、CADPの理念や目指す方向性、計画策定の進捗状況について熱のこもった説明を受けた。

冒頭、あいさつした御手洗冨士夫会長は、「計画策定の指揮をとるスリン事務総長から、会員企業に直接説明いただくことに感謝する。膨大な需要が見込まれるアジアの広域インフラ整備は、地域の成長にとって不可欠であるとともに、ビジネスチャンスでもあり、日本企業の持つ環境・省エネの技術やノウハウが大きく貢献できる」と述べた。

講演でスリン事務総長はまず、CADPは、36億人の人口を有し、GDPや貿易量で世界の半分以上を占める東アジア16カ国(ASEAN10カ国、日本、中国、韓国、インド、豪州、ニュージーランド)が、より統合を深めるために合意するビジョンであると述べた。また、国際社会からの期待に応えるために、16カ国すべての力を結集することが重要との見解を示した。

続いて、東アジアはコネクティビティー(接続性)を高めるために、道路、鉄道、港湾、航空、通信といった物理的インフラに加えて、通関、金融、保険などの制度的インフラも同時に整備することが極めて重要であると説明した。そのうえで、これらのために検討されている600を超すプロジェクトの総額は2400億米ドルに上り、各国政府単独での実現は困難であるとして、参加した日本企業代表に官民パートナーシップ(PPP)による参画を呼びかけた。

最後にスリン事務総長は、CADPは東アジアの自信と今後の発展の土台を世界に対して示す青写真であり、その具体化を通じてグローバルな競争のなかで東アジアが持続的に発展していくことを期待する、と締めくくった。

続いて、ASEAN事務局とともにCADPの策定に当たっている東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)の木村福成チーフエコノミスト(慶応義塾大学経済学部教授)から、CADPの経済効果や対象となるプロジェクト事例など、同計画の詳細な内容について説明があった。参加した会員企業との間では、国境をまたぐプロジェクトの推進における各国間の調整、インフラ整備の資金調達、経済回廊に沿った送配電網整備などについて質疑応答が行われた。

なお、今年秋に予定される東アジア首脳会議において、CADPの最終報告が取りまとめられることとされている。

【国際協力本部】
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