日本経団連タイムス No.3000 (2010年6月10日)

「子ども・子育て新システム構築に向けた要望」を日商と共同で発表

−政府の検討状況聞き意見交換


政府は新たな子育て支援の制度設計に向け、「子ども・子育て新システム検討会議」を設置、幼保一体化を含む保育サービス提供のあり方等の検討を進め、4月末に「子ども・子育て新システムの基本的方向」を発表した。これを受け、経団連は5月17日に少子化対策委員会企画部会(高尾剛正部会長)を開催し、泉健太内閣府大臣政務官から、政府の検討状況について説明を聞き、意見交換を行った。さらに6月8日、日本商工会議所(岡村正会頭)と共同で、「子ども・子育て新システム構築に向けた要望」を発表した。

1.懇談の概要

子ども・子育て新システムの設計方針として、子ども・子育てを社会全体で支援すること、地域主権を前提に住民の多様なニーズに応えるサービスの実現を目指している。そのために、子育て関連予算を一つにまとめ、特別会計または基金を創設し、労使・事業主・本人・国からのお金をプールし、一括交付金として地方自治体へ配分する仕組みを検討している。また、子ども手当等の全国一律に定められた給付を超える部分については、地方自治体の裁量により現金給付、サービス給付など給付設計を決める仕組みとする。このほか子ども家庭省を将来的に設置する方向で、可能なところから業務の一体化を図る。

今後さらなる検討を行い、6月を目途に方針を固め、2011年の通常国会に法案を提出し、13年の本格施行に向けて段階的に実施していきたい。

新システムにより3つのことを実現したいと考えている。第1は、幼保一体化である。新たに「こども園」制度をつくり、幼稚園・保育所のサービスメニューの共有化を図っていきたい。第2は、妊娠から育児休業・保育・放課後対策までの切れ目のないサービス保障である。第3が、保育サービスの集中的整備や多様な提供主体の参入である。給付は2階建てのイメージで、基礎給付(子ども手当や一時預かり等すべての子どもを対象とする給付)と両立支援・幼児教育給付(保育サービス等親の就労状況に応じた給付)とで構成する。両立支援に資する部分には事業主負担をお願いしたいと考えている。

<意見交換>

意見交換では、経団連側から「子育て支援は公費対応が基本であり、歳入改革をまず進めてほしい。現行の事業主拠出の改善策も示さず、追加的な公費投入の目途も立たず、拠出規模や中長期の負担見通しが明らかでないなか、企業に拠出を求められても応じられない」「各省の施策間連携を図るために特別会計や基金を創設する必要はない。子育て支援予算の確保から施策実施状況の評価までを担う司令塔を設けるべき」との要請があった。

これに対し、泉政務官からは「消費税は国民のコンセンサスを得ることが難しいうえに、仮に引き上げられても、少子化対策予算の確保だけ先行はできない。特別会計や基金については、行政の肥大化につながらない仕組みを考えたい。内閣府は、省庁横断的に政策を判断する立場だが、そのようには機能していない実情があるので、改めてその機能を検討したい。子育て支援に国民全体から広く負担を求める仕組みとして、年金や雇用保険に上乗せして徴収することも検討している」との認識が示された。

2.要望書のポイント

政府の検討状況を踏まえ、経団連および日商は、(1)企業負担の拡大には断じて応じられず、公費負担の財源について抜本的対応を早急に講じること(2)特別会計あるいは基金の創設には反対であり、内閣府を司令塔に政府一体で施策推進すること――の2点を新システム構築にあたり考慮するよう政府に求めた。今後、子ども・子育て新システム検討会議の委員ほか、関係各方面の理解が得られるよう、必要な働きかけを行っていく予定である。

【経済政策本部】
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