日本経団連タイムス No.3000 (2010年6月10日)

スティグソンWBCSD事務総長と懇談

−気候変動問題で意見を交換


経団連は5月28日、東京・大手町の経団連会館で、ビヨン・スティグソンWBCSD(持続可能な発展のための世界経済人会議)事務総長と日本のWBCSD理事会メンバーとの懇談会を開催した。懇談会には、清水正孝副会長(WBCSD副会長)、坂根正弘副会長らが出席し、気候変動問題について意見交換を行った。

まず、スティグソン事務総長は、COP15は、最後の旧来型政府間交渉であり、今後、同様な会議は行われないだろうと評した。そして、国際気候変動交渉における障害として、(1)すべての国にとって気候変動問題が最優先課題ではあるとは限らないこと(2)国によって容認できるコミットメントは多種多様であること(3)発展途上国への資金援助のあり方(4)国内の環境政策が国際競争力に与える影響(5)気候変動の科学的根拠に対する信頼低下(6)米国の国内法制問題――等を挙げた。

そのうえで、今年11月末からメキシコで開催されるCOP16について、事態が進展する可能性は低いとの見通しを示した。

清水副会長からは、COP15では、ボトムアップ型の排出削減アプローチが重視され、今後、産業界が果たすべき役割はますます大きくなるとの見解が示された。

坂根副会長は、CO2排出量を削減するためには、最先端の企業がBAT(Best Available Technologies、利用し得る最良の技術)を開発し、残りの企業がそれを取り入れていくようにするしかないと指摘。さらに、COP15で、すべての国が同等の発言権を有する、国連の意思決定プロセスの限界が露呈しており、今後は、まず、主要国による交渉を進める必要があると述べた。

この点について、スティグソン事務総長は強い同意を示し、190カ国ほどの国が一堂に会して気候変動問題に対処することは不可能に近く、例えばG20のような、より少数の国で議論するかたちの方がよく、その際にカギとなるのは米国であると指摘。米国において関連法が成立しない限り、オバマ大統領は国際交渉でコミットできず、米国がコミットできない限り、中国を含め一部の国もコミットできないとの説明があった。

最後に、清水副会長が、経済性・環境・エネルギー安定供給の3つのバランスを取ることが重要であり、今後とも産業界として諸課題に取り組む決意であると述べて締めくくった。

【環境本部】
Copyright © Nippon Keidanren