日本経団連タイムス No.3025 (2011年1月1日)

COP16にミッション派遣

−公平で実効ある単一の国際枠組構築へ政府交渉団に働きかけ
/メキシコ経済団体との会合やBizMEF通じ共同声明も


国連気候変動枠組条約第16回締約国会議(COP16)が11月29日から12月10日までの2週間、メキシコ・カンクンで開催され、ポスト京都議定書の国際枠組をめぐる交渉が行われた。交渉では、米中等の主要排出国が削減義務を負わない現在の京都議定書の延長が懸念された。
そこで、日本経団連は坂根正弘副会長を団長とし、環境安全委員会の主要メンバーによるミッションを組み、現地で交渉に当たった日本政府代表団への働きかけなどを行った。
結果の概要は次のとおり。

■ カンクン合意の概要

カンクンで採択された最も重要な決定は、「米中を含むすべての先進国・途上国を対象とする温室効果ガス削減の包括的枠組みの構築を目指す」ことである。また、昨年のCOP15における「コペンハーゲン合意」に基づき、各国が国連に登録した目標に留意することとされた。コペンハーゲン合意では、米中を含め、世界のCO2排出量の8割以上を超える国々が目標を提出している。経団連は「コペンハーゲン合意を土台に、単一の国際枠組を構築すべき」と訴えてきており、重要な成果である。

他方、「京都議定書の延長」に関しては、2012年までの第一約束期間と第二約束期間との間で、削減義務の空白期間が生じないようなタイミングで結論を得ることとされている。しかし、日本の要請により、各国が京都議定書の第二約束期間に数字を書き込まない権利も担保されている。

■ 経団連の主な働きかけ

現地では、松本龍環境大臣や田嶋要経済産業大臣政務官、山花郁夫外務大臣政務官にそれぞれ何度も面会し、「あくまで米中が参加する包括的な枠組みの構築を目指し、京都議定書の延長はしない」ことを強く求めた。これに対し、大臣らから異口同音に、「世界の排出量の27%しかカバーしていない京都議定書の延長は、温暖化防止の役に立たない。そこは絶対譲れない」との発言があった。

また、当初は日本が孤立しているのではないかとの懸念もあったが、産業界の支援も受け、常に断固たる姿勢を堅持した日本政府交渉団の対応が、今回の交渉の流れを方向付けたと言える。

メキシコ経済団体CESPEDESと共同声明に合意

経団連はCOP16開催中の12月5日、メキシコ・カンクンにおいて、メキシコの経済団体であるCESPEDES(持続可能な発展に関する民間部門研究センター)と共催で、ポスト京都議定書の国際枠組と二国間オフセット・メカニズム等に関するサイドイベントを開催した。あわせて環境安全委員会地球環境部会と同団体との間でCOP16における気候変動、エネルギー、経済成長に関する共同声明に合意した。サイドイベントでは、日本側から、同委員会の手塚宏之国際戦略ワーキング・グループ座長代理が開会あいさつを行い、経済産業省環境政策局の小林出交渉官が出席し、日本政府が提案している二国間オフセット・メカニズムについて説明を行った。また、立花慶治東京電力フェロー、和泉良人セメント協会審議役が、各業界の気候変動問題、途上国協力への取り組みについて、プレゼンテーションを行い、意見交換を行った。

共同声明のポイントは次のとおり(全文は、URL=http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2010/119.html 参照)。

利用可能な最良の低炭素技術を地球規模で普及させることは、革新的技術の開発と並び、温室効果ガスの大幅な削減を可能とする。

京都議定書によって導入されたクリーン開発メカニズム(CDM)は、低炭素技術を普及させる手段の一つである。しかし、克服すべき欠陥がある。

CDMを補完するものとして、われわれは、日本政府が提案している二国間オフセット・メカニズムの創設を歓迎する。二国間オフセット・メカニズムは低炭素技術・製品の地球規模での普及を促進するものである。

強制許諾を含む知的財産権の保護を弱めることは、技術移転を促進したり、新たな革新的技術開発に投資したりするビジネスの意欲を阻害するものである。

気候変動に関する新しい国際枠組を実効的で公平なものとするためには、比較可能な排出削減・排出抑制努力をもってすべての主要排出国が参加し、共通だが差異ある責任と能力の原則が尊重されるものでなければならない。

BizMEFに参加し、共同声明を公表

経団連はCOP16開催中の12月6日、メキシコ・カンクンにおいて、BizMEF(エネルギー安全保障と気候変動に関する主要経済国ビジネスフォーラム)の会合に参加し、共同声明を取りまとめた。会合には、経団連から、手塚環境安全委員会国際戦略ワーキング・グループ座長代理、立花東京電力フェローが参加した。

BizMEFは主要国の総合経済団体で組織され、日本からは経団連が参加している。今回の共同声明には、経団連に加え、先進国、途上国から、計15団体が参加した(本文サマリーは、URL=http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2010/118.html 参照)。

BizMEFはあわせて、自らのポジションや活動を情報発信するホームページ(URL=http://majoreconomiesbusinessforum.com/index.html )を立ち上げることにも合意した。

共同声明は、技術、低炭素社会への道筋、市場の役割の見通し、測定・報告・検証(MRV)の見通しの各分野で取りまとめた。ポイントは次のとおり。

<技術>

<低炭素社会への道筋(Low Carbon Pathway)>

<市場の役割の見通し>

<測定・報告・検証(MRV)の見通し>

【環境本部】
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