日本経団連タイムス No.3026 (2011年1月13日)

子ども・子育て新システム検討状況めぐり意見交換

−少子化対策委員会企画部会


日本経団連の少子化対策委員会企画部会(高尾剛正部会長)は、12月24日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、村木厚子・内閣府政策統括官(共生社会政策担当)ら政府担当者から、新たな子育て支援システムにかかわる検討状況について説明を聞き、意見交換を行った。
村木氏の説明概要は次のとおり。

政府は、昨年9月以降、検討組織を設置し、「子ども・子育て新システム制度案要綱(2010年6月29日閣議決定)」に基づき、制度・財源・給付の一元化に向け、具体的な検討を進めている。新システムの基本設計は、実施主体である市町村の権限と責務を強化するとともに、国・地方・事業主・個人など、社会全体の費用負担により、重層的に支える仕組みである。

これまでの審議では、幼児教育・保育を一体的に提供する「こども園」の機能など、幼保一体化の具体的な仕組みや給付設計にかかわる検討を行っている。幼保一体化には2つの側面がある。第1に、新たにこども園を創設し、施設機能の一体化を図ることである。幼稚園・保育所制度を統合し、こども園へ移す仕組みや、現行の幼稚園・保育所制度を維持しつつ、両機能を一体的に「こども園」に併存させる仕組みなど、5つの移行案を示しているが、まだ議論は収斂していない。第2に、「幼保一体給付」を通じ財政措置の一体化を図ることである。現行では、文部科学省所管の幼稚園と厚生労働省所管の保育所とでは財政措置や利用者負担が異なる。また、幼児教育と保育を総合的に提供する認定こども園は既存の財政措置を組み合わせるため、二重行政の問題が指摘されている。

そこで新システムでは、給付体系を一体化し、(1)市町村が保育の必要性を認定する仕組みのもと、個人給付を保障する(2)利用者と事業者が直接契約を結び、費用は公定価格を基本とする(3)指定制を導入し指定事業者は給付の代理受領を可能とする――仕組みを想定している。これにより、二重行政の解消や財政措置・利用者負担の公平性の確保を図る考えである。このほか、現行の出産手当金と育児休業給付をこのシステムの給付として位置付けるかどうかを検討しているが、受給者範囲・支給額・給付の事務主体・拠出ルート等、多くの課題がある。今後、費用負担のあり方等の検討を引き続き進め、法律案の大綱を取りまとめ、2011年の通常国会への法案提出、13年の施行を目指している。

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続いて行われた意見交換では、「子育て支援は公費対応が基本であり、財源は消費税がふさわしい。政府は、社会保障と税の一体改革に向けた方針を2011年半ばまでに示すとのことだが、新システムの法案提出が先行するのは問題。財源面の裏付けを空白にしたまま、拙速な議論で強引に取りまとめるべきではない」「保育サービスの多様性や価格の柔軟性を確保することが重要。介護保険にならうかたちでサービス類型や公定価格を定める仕組みで対応できるのか」「特別会計を創設し財源を一元化すれば融通がきくとの発想が問題。給付と負担の整合が取れず、使途のわからない仕組みに事業主は拠出できない」との意見があった。

これに対し、村木氏からは「財源構成・費用負担は1月以降検討していくが、消費税を含む税制改革の議論に乗り遅れないよう、保育サービスの必要額を提示しつつ、法案提出のタイミングはよく見計らいたい。また、子育てに確実に使われる流し方がほかにあれば、特別会計にはこだわらない。財源の一元化で拠出と受益の関係がどんぶり勘定になるとの指摘だが、お金の流れの透明化を図りつつ、拠出者が施策運用にしっかりかかわれる仕組みを考えたい」との認識が示された。

【経済政策本部】
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