日本経団連タイムス No.3026 (2011年1月13日)

中国経済の成長持続性について議論

−いつごろまで、どの程度の成長が可能か
/21世紀政策研究所の中国研究チームがシンポジウム


日本経団連の21世紀政策研究所(米倉弘昌会長、森田富治郎理事長)は12月17日、東京・大手町の経団連会館で「中国経済の成長持続性−いつ頃まで、どの程度の成長が可能か?」と題するシンポジウムを開催し、日本経団連の会員企業・団体を中心に257名が参加した。

同研究所では、中国経済が大きな転換期にあるとの認識のもと、長期的な展望を探るとともに研究成果をビジネス界に提供すべく、3年前に研究チームを組織。以後、各方面から専門家の参加を得て、毎年シンポジウムを開催している。

近年の中国はグローバル経済における重要性が高まる一方、指導体制は移行期にあり、内外にさまざまな課題や軋轢を抱えるなか、「新5カ年計画」では成長の質をより重視した政策転換を目指している。

そこで、今回のシンポジウムは、「中国経済の成長持続性」をテーマに、いつごろまで、どの程度の成長が可能かという問題意識のもと、(1)人口動態(2)対外経済(3)資源・環境――という3つの視点から中期的な成長持続性を検証し、さまざまな断面をつなぎ合わせることで、今後の中国経済の成長イメージと、そこに潜む構造調整の課題を浮き上がらせることをねらいとしている。

まず、報告セッションでは、日本総合研究所の大泉啓一郎主任研究員、専修大学の大橋英夫教授、長岡技術科学大学の李志東教授から、次の趣旨の報告があった。

大泉氏は、人口動態の観点から経済発展の持続性を読み解く人口ボーナス論によると、中国の経済発展のピークは2015年ごろになると説明。中国ではすでに少子高齢化が加速しており、過剰労働力の活用と生産性の向上が持続的成長のカギを握るが、同時に地域間人口移動がもたらす地域間所得格差への対応も強く求められるであろうと指摘した。

対外関係においては、中国からの輸出をめぐって諸外国との経済摩擦が危惧される。大橋氏は、マクロ的な貯蓄投資バランスを改善しない限り中国からの輸出圧力は続くが、近年の中国の貿易パターンは、積極的財政政策の効果等もあって最終財の輸入が増加傾向にあると説明。中国経済が内需主導型経済へと転換する一つの兆候と見ることが可能かもしれないと述べた。

最後に李氏は、国際的な低炭素化競争の時代に入り、中国としても成長の質の向上とともに国際的な交渉ポジションの強化を図る必要があると述べ、現在、中国政府が指針を制定して国内の実情に適した排出量抑制システムを模索する過程にあり、次期中長期計画ではさらに踏み込んだ措置が採用されるであろうと指摘した。

続くパネル討論では、拓殖大学の杜進教授と朱炎教授が加わり、杜進教授による進行のもと、経済成長にかかわる短期的・中長期的な制約要因、日中の協力関係などを中心テーマに、先の報告内容をより具体化するかたちで活発な議論が展開された。

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これまで余剰労働力に恵まれ、労働集約型産業による加工貿易を通じて世界経済へのリンケージを強めてきた中国が、今後、さまざまな次元で構造変化に直面するなかで、どのような発展戦略を選択し、国際社会でどのような役割を引き受けるかは、引き続き注目すべきテーマであろう。
研究成果『中国経済の成長持続性』(仮題)は、今年7月に勁草書房から出版される予定である。

【21世紀政策研究所】
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