日本経団連タイムス No.3028 (2011年1月27日)

ヤヌコーヴィチ・ウクライナ大統領と懇談

−日本の投資拡大に強い期待感


ヤヌコーヴィチ・ウクライナ大統領(左)と 握手する米倉会長

日本経団連の米倉弘昌会長は18日、東京・大手町の経団連会館で、ウクライナのヤヌコーヴィチ大統領と懇談し、二国間経済関係の一層の強化について意見交換を行った。続いて、岡素之日本NIS経済委員長の司会で、同大統領一行との懇談会が開催された。ヤヌコーヴィチ大統領の発言要旨は次のとおり。

経済改革を断行

ウクライナは新しい発展期に入った。昨年6月に、マクロ経済の安定化、社会保障基盤の改善、ビジネス環境の整備、インフラ・基幹産業の近代化の4つを柱とする「2014年までの経済改革プログラム」を策定し、透明性が確保された魅力的な投資環境の実現に向け努力している。昨年のGDP成長率は前年比5%弱、鉱工業生産高は同10%超、貿易額も同60%、それぞれ増加した。再開されたIMFによる支援もウクライナがIMFに対する義務を完全に果たしていることから、順調に進展している。行政手続きの簡素化、規制の緩和・撤廃等にも取り組んでおり、今月1日には新たな税法典が施行された。

日本との協力拡大を重視

今年最初の海外訪問先に日本を選択したことは、ウクライナが日本との関係発展を重視している証左である。しかし残念なことに、ウクライナの外国直接投資受入額のうち、日本はわずか0.3%にすぎない。これを改善するために、今般両国政府が交渉開始に合意した、二国間投資協定の早期締結を期待している。

今後はグリーン投資スキーム(GIS)(注)により取得した資金を活用し、省エネプロジェクトを積極的に実施していきたい。ウクライナは日本企業の省エネ技術に大いに関心がある。火力発電所の近代化、近隣諸国市場も視野に入れた太陽電池と風力発電用ガスタービンの工場建設、炭鉱におけるメタンガスの回収、家庭ごみ等の廃棄物処理施設の建設、熱供給システムの近代化、上下水道・水処理施設の整備、バイオマスの活用等、各種プロジェクトにぜひ参画してほしい。

また、2012年にウクライナとポーランドが共催するUEFA欧州選手権(EURO2012)の準備に向け、コンセッション方式やPPP(官民連携)等を活用しつつ、日本の輸送インフラの優れた技術・ノウハウを導入していきたい。その他、食料品の加工を含む、農業分野での協力も有望である。

ウクライナに対するイメージの刷新や関心の高まりを期待

過去の混乱期を乗り越え、ウクライナの政治経済は、日に日に安定感を増している。ウクライナは日本にとって信頼できるパートナーである。新たなウクライナに注目してほしい。

(注)クレジット代金を環境対策に使う条件で行う国際排出量取引
【国際経済本部】
Copyright © Nippon Keidanren