日本経団連タイムス No.3028 (2011年1月27日)

東内閣府副大臣が大規模水害と首都直下型地震への取り組みで講演

−防災に関する委員会


説明する東副大臣

防災に関する委員会(木村惠司共同委員長、小野寺正共同委員長)は18日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、内閣府の東祥三副大臣、越智繁雄参事官から、大規模水害と首都直下型地震に関する国の取り組みの現状と課題について説明を聞くとともに、意見交換を行った。

東副大臣はまず、大規模水害の課題と対策について次の5点を指摘した。

(1)浸水による電力等のライフラインの途絶

変電所等の浸水による電力の供給停止や住宅、ビル等の電源設備の浸水による停電が発生し、設備の復旧に時間を要し、電力が使用不可能な状況が長期化しかねない。ライフラインの各施設における止水対策の実施や電力設備の上階設置、耐水化が必要である。

(2)地下空間を通じた浸水区域の拡大

地下空間の浸水は、地下空間を通じて短時間で広範囲に拡大する可能性がある。地下空間管理者や地方公共団体からなる協議会を設置するなど災害時の連携体制の整備と避難確保計画の早期制定が求められる。

(3)孤立期間の長期化と生活環境の悪化

電気、通信、上下水道などが使用できず、孤立期間が長期間にわたった場合には、生活環境の維持が困難となる。このため、避難場所・避難方法を複数想定するとともに、万一に備え必需品の備蓄を実施することが必要である。

(4)広大な浸水地域、深い浸水深

1947年に発生したカスリーン台風と同じ場所で同規模の水害が発生した場合、最悪の想定では浸水面積は約530平方キロメートル、浸水区域内人口は約230万人となる。行政区域を越えた広域的な避難を行えるよう、地方公共団体が連携して、あらかじめ広域的な避難計画を策定することが求められる。

(5)地域によって異なる氾濫流の到達時間

氾濫流が到達するまでに数時間を要する地域が存在する一方、堤防決壊箇所近傍地域や高潮氾濫による浸水地域は氾濫流到達までの時間が短いことが想定される。浸水地域や浸水深等の情報を速やかに収集し、関係者間で共有するための体制を整備するとともに、堤防決壊後の氾濫拡大の状況、避難ルートや安全な場所等、住民の避難行動を促すための情報提供を行うことが重要である。

続いて、東副大臣は首都直下型地震について、帰宅困難者対策に絞って説明を行った。仮に首都圏で昼間に大規模地震が発生した場合、多くの帰宅困難者が発生することが予想されるが、その多くが企業に所属していることから、「むやみに移動を開始しない」という基本原則の周知・徹底、企業等における翌日帰宅・時差帰宅の促進を参加企業に要請した。

この後、委員会では、越智参事官が水害、地震について、データ等を用いた詳細な説明を行った後、委員との活発な意見交換を行った。

【政治社会本部】
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