日本経団連タイムス No.3029 (2011年2月3日)

中国地方経済懇談会を広島で開催

−「日昇る国」実現と中国地域の新たな成長へ


あいさつする米倉会長

日本経団連と中国経済連合会(中国経連、福田督会長)は1月25日、広島市内のホテルで「第39回中国地方経済懇談会」を開催した。懇談会には、経団連から米倉弘昌会長をはじめ評議員会議長、副会長らが、中国経連からは福田会長はじめ会員約200名が参加し、「『日昇る国』の実現と中国地域の新たな成長を目指して」を基本テーマに、活動報告と意見交換を行った。

開会あいさつのなかで中国経連の福田会長は、中国地方の経済情勢について、円高や政策効果の息切れなどにより、景気は足踏み状態に入っていると説明した。そのうえで、中国地方の活性化に向けて、(1)「ものづくり産業」を中心とした地域産業の振興(2)社会基盤の整備促進(3)道州制実現に向けた改革の推進――の3つがポイントになると指摘。中国地域の新たな成長に向け、チャレンジ精神を持って取り組んでいきたいと抱負を述べた。

続いてあいさつした経団連の米倉会長は、今年は、わが国が力強い経済を取り戻し、安心・安全な社会を構築するための正念場の年であると述べ、(1)イノベーションの推進と企業家精神の発揮(2)成長戦略の実現と改革の断行(3)平成の開国と力強い農業の実現――の3点が重要課題であると指摘した。そのうえで、課題解決に向けた経団連のアクションプランである「サンライズ・レポート」について説明し、「未来都市モデルプロジェクト」の実現に向けて、中国経連に対して理解と協力を呼びかけた。また、菅第二次改造内閣の発足に際して建議した「新内閣に望む」にも触れ、重要政策課題に不退転の決意で取り組むよう政府に強く求めたことを説明した。

■ 活動報告

第1部の活動報告では、経団連側から、岩沙弘道副会長が「未来都市モデルプロジェクト」、大橋洋治副会長が「今次労使交渉における経営側の基本姿勢」、川村隆副会長が「経済界の教育支援に関する取り組み」、渡文明評議員会議長が「TPP(環太平洋経済連携協定)をはじめとする経済連携の推進」、三浦惺副会長が「農業改革の推進」を報告した。

「未来都市モデルプロジェクト」では、スマートグリッドの構築や再生可能エネルギーの活用、次世代交通システムの導入など、今後の成長分野において、企業が持つ先端技術などを結集し、低炭素型、循環型のまちづくりなどに向けて、都市を舞台に実証実験を行うというプロジェクトの検討状況が報告された。また、「今次労使交渉における経営側の基本姿勢」では、国内事業立地の維持を図るには、賃上げより雇用を重視した交渉が重要であると指摘するとともに、新規学卒者への採用機会の拡大を求めた。「経済界の教育支援に関する取り組み」では、産業界の教育支援活動や、初等・中等教育段階からの企業の教育への関与を推進していくための取り組みが報告された。「TPPをはじめとする経済連携の推進」では、TPP交渉への一刻も早い参加とともに、国民的な理解、国を挙げた取り組みの必要性を指摘した。「農業改革の推進」では、わが国農業の成長産業化に向けて、連携・協力の事例集の取りまとめなどの取り組みの状況が報告された。

他方、中国経連側から、井巻久一副会長が「新たな成長戦略の実現のための科学技術政策・産学官連携の推進」、田村浩章副会長が「社会資本(交通・物流基盤)の整備促進」、永島旭副会長が「人口減少・高齢化時代を踏まえた地域社会の再構築」についてそれぞれ報告。「新たな成長実現のための科学技術政策・産学官連携の推進」では、県域を越えた連携など、連携拡大に向けた取り組みが報告された。「社会資本の整備促進」では、中国地域における国際物流機能の強化や、観光客誘致による交流の促進に向けて、高速道路や港湾の整備促進に向けた要望活動が報告された。「人口減少・高齢化時代を踏まえた地域社会の再構築」では、疲弊が進む地方都市の再生に向けて、コンパクトシティー化の推進や公共施設の効率的な整備と維持などの重要性を指摘した。

■ 意見交換

第2部の意見交換では、中国経連から、(1)地域産業の空洞化を回避するための経済対策・産業政策(2)分権型国家実現に向けた地域主権改革・道州制導入の促進(3)広域観光・インバウンド観光の推進(4)地域の情報通信基盤の整備とICT利活用の促進(5)経済成長の両立を可能とする地球温暖化対策の推進(6)税・財政・社会保障の一体改革の推進――の6点について質問があった。

これに対して経団連からは、(1)「新成長戦略」の早期かつ着実な実行(川村副会長)(2)道州制導入に向けた機運の醸成と国民各層の合意形成(前田晃伸副会長)(3)観光コンテンツの強化と効果的な情報発信、休暇分散化に向けた国民のコンセンサス形成(佃和夫副会長)(4)番号制度の導入による安心、便利、効率的な電子行政の推進(渡辺捷昭副会長)(5)ポスト京都議定書における日米の連携の必要性、日本が開発した技術を普及させるための新たな枠組みの構築(坂根正弘副会長)(6)税・財政・社会保障に関する超党派による議論の早急な開始(森田富治郎副会長)――が必要と応じた。

【総務本部】
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