日本経団連タイムス No.3030 (2011年2月10日)

関西会員懇談会を大阪で開催

−当面の経済運営などで関西地区会員と意見交換


関西会員懇談会であいさつする米倉会長

日本経団連は1月26日、大阪市内で関西会員懇談会を開催した。懇談会には、米倉弘昌会長はじめ評議員会議長、副会長や、関西地区の会員企業代表者約400名が出席し、当面の経済運営や関西経済の課題などについて意見交換した。

開会あいさつのなかで米倉会長は、今年は、わが国が力強い経済を取り戻し、安心・安全な社会を構築するための正念場の年であると述べ、(1)イノベーションの推進と企業家精神の発揮(2)成長戦略の実現と改革の断行(3)平成の開国と力強い農業の実現――の3点が重要課題であると指摘した。そのうえで、課題解決に向けた経団連のアクションプランである「サンライズ・レポート」について説明し、「未来都市モデルプロジェクト」の実現に向けて最大限努力していくと述べた。また、菅第二次改造内閣の発足に際して建議した「新内閣に望む」にも触れ、重要政策課題に不退転の決意で取り組むよう政府に強く求めたことを説明した。

■ 活動報告

第1部の活動報告では、まず、岩沙弘道副会長が「未来都市モデルプロジェクト」について報告。スマートグリッドの構築や再生可能エネルギーの活用、次世代交通システムの導入など、今後の成長分野において企業が持つ先端技術などを結集し、低炭素型、循環型のまちづくりなどに向けて、都市を舞台に実証実験を行うというプロジェクトの検討状況が報告された。

続いて川村隆副会長が「経済界の教育支援に関する取り組み」を報告。産業界の教育支援活動や、初等・中等教育段階からの企業の教育への関与を推進していくための取り組みが報告された。

大橋洋治副会長は、1月18日に公表した「2011年版経営労働政策委員会報告」 <目次のみ掲載>について説明し、国内事業立地の維持を図るには、賃上げより雇用を重視した交渉が重要であると指摘するとともに、新規学卒者への採用機会の拡大を求めた。

森田富治郎副会長からは税・財政・社会保障制度の一体改革に向けた経団連の活動について報告がなされ、消費税率の社会目的税化と税率引き上げが不可欠であるとしたうえで、一体改革の早期実現に向けて超党派による議論の早急な開始の必要性を指摘した。

渡辺捷昭副会長は、番号制度の導入に向けた取り組みを報告。提言「豊かな国民生活の基盤としての番号制度の早期実現を求める」に触れ、番号制度の導入による安心、便利、効率的な電子行政の推進が必要であると指摘した。

佃和夫副会長からは「観光産業の振興に向けた取り組み」が報告され、昨年11月29日に開催された「観光立国シンポジウム」の様子を報告するとともに、シンポジウムでの議論を踏まえて、観光コンテンツの強化と効果的な情報発信の重要性を指摘した。

前田晃伸副会長は「2010年度規制改革要望」について報告。経団連が提案した規制改革要望の多くが進展をみせている状況に一定の評価ができるとした一方で、今後は政府に対して、さらなる改革の前倒しや内容の充実を求めていくとした。

渡文明評議員会議長からは、「TPP(環太平洋経済連携協定)をはじめとする経済連携と農業改革の推進」が報告され、TPP交渉への一刻も早い参加とともに、経済連携交渉の論点の1つとなる農業について、多様な担い手による農地の集約、経営規模の拡大と生産性向上、農商工連携などによる農業分野の改革の必要性を指摘した。

槍田松瑩副会長は「海外インフラ整備に関する取り組み」を報告。官民連携によるトップセールスの全面展開や相手国との政策対話の推進などの必要性を指摘するとともに、昨年10月末の東アジアサミットでの政策対話ミッションの成果を報告した。

■ 自由懇談

自由懇談では、関西地区会員から、関西電力の森詳介会長が、CO2の25%削減を含めて、国民不在での環境政策の立案に対し、早急な転換を政府に働きかけていくことを求めるとともに、関西が日本をリードしている低炭素化に向けた技術で世界に貢献していくと述べた。また、川崎重工業の大橋忠晴会長は、現実的な環境・エネルギー戦略の必要性を指摘し、わが国に蓄積された世界最高水準の省エネ・環境保全技術を世界に普及させていくことが重要であると述べた。

これに対し、坂根正弘副会長は、地球温暖化対策と成長戦略の両立のカギを握るのは技術であるとの認識を示し、今後の経団連の取り組みとして、(1)ポスト京都議定書における日米の連携強化(2)日本が開発した技術を普及させるための新たな枠組みの構築――を引き続き政府に訴えていくと述べた。

住友金属工業の下妻博会長は、関西広域連合の実現に向けて、税源・権限の移譲を求めるとともに、2045年に開業が見込まれるリニア中央新幹線についても触れ、開業時期の前倒しに向けた運動を展開していくと意気込みを見せた。

開発進む梅田北ヤード視察

懇談に先立ち経団連首脳は、現在開発が進んでいる、梅田北ヤードを視察。先行開発地域の中核機能であるナレッジキャピタルプロジェクトの概要について説明を受けた。

【総務本部】
Copyright © Nippon Keidanren