日本経団連タイムス No.3033 (2011年3月3日)

わが国の海上安全保障で説明を聞く

−海洋開発推進委員会総合部会


日本経団連は2月17日、東京・大手町の経団連会館で、海洋開発推進委員会総合部会(山脇康部会長)を開催した。当日は、政策研究大学院大学の岩間陽子教授から、わが国の海上安全保障について説明を聞くとともに意見交換を行った。
岩間教授の説明の概要は次のとおり。

■ 海洋における覇権国家

16世紀から17世紀にかけて、スペイン、オランダ、イギリスは海洋国家として発展した。イギリスでは、海軍が国を守っていた。これは、ヨーロッパの端にある島国というイギリスの地理的条件による。イギリスは20世紀まで、その海軍力によりインド、オーストラリア、カナダにまで植民地を広げてきた。
19世紀末から20世紀にかけて、基本的に陸上国家であったドイツが海軍力でイギリスを抜いた。しかし、ドイツは外交面で弱かったことから、第2次世界大戦では敗戦国となった。
第2次世界大戦後は、イギリスのインフラを引き継いだアメリカ海軍の制海権が圧倒的になったことで、自由貿易体制が確立した。1980年代に日本の海上自衛隊はシーレーン防衛を行ったが、これはアメリカの優位の継続にも貢献した。

■ 21世紀の安全保障

20世紀の安全保障の主体は国家であった。第2次大戦後、米ソの核戦力が均衡していたことで、大国間の戦争は起きなかった。
21世紀に入ると、2001年の9・11テロが巨大なインパクトを持ち、伝統的安全保障から非伝統的安全保障へと変わった。相手は非国家主体となり、平時と戦時の区別がなくなった。ソマリア沖では非国家主体である海賊が発生し、日本は自衛隊の哨戒機と護衛艦を派遣している。

■ わが国の海上安全保障

アメリカは2010年2月のQDR(4年ごとの国防計画見直し)で、中国の海軍に強い警戒感を示した。
わが国では昨年12月に防衛計画の大綱が策定されたが、実際に人や物を動かすための設計図が必要である。中国海軍が進出して、自由に通行できなくなったら、わが国の物資の海上輸送にとって死活問題となることから、防衛力としては海と空が重要となる。
日本にとっては、装備などの安全保障の充実とともに、政治力や情報力を上げることが必要であり、中国との間でさまざまなチャネルを持つことが強みとなる。

【産業技術本部】
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