日本経団連タイムス No.3035 (2011年3月17日)

「国民生活の安心基盤の確立に向けた提言」を取りまとめ

−政府の社会保障と税の抜本改革案視野に経団連の考え方を反映へ


日本経団連は11日、「国民生活の安心基盤の確立に向けた提言」を公表した。同提言は、社会保障委員会(森田富治郎委員長、荻田伍共同委員長)ほか関係委員会において、今年6月に予定されている政府の社会保障と税の抜本改革案を視野に入れ、経団連の考え方を反映させることを目的に取りまとめたものである。

まず、「社会保障改革に臨む基本姿勢」では、次の3つの視点を挙げた。

(1)歳入改革を通じた社会保障の安定財源の確保

国民の安心と国家財政への国内外の信認を得るため、消費税率の引き上げなどの歳入改革を通じた社会保障の安定財源の確保に早急に取り組むべき。

(2)経済成長が改革の要

経済活力は安心・安全な国民生活の基盤であり、財政健全化も経済成長が大前提。成長や雇用創出を阻害する社会保険料の引き上げによって、増え続ける社会保障給付費を賄うべきではない。

(3)問題の共有化・見える化

社会保障の現状と課題の共有化を図り、時間軸を明確にした改革の全体像を提示し、制度設計の議論を徹底的に具体化すべき。

次に、「社会保障制度の現状と改革の方向性」では、各制度についての改革案を示した。

<医療>

前期高齢者を含む高齢者医療給付費における税負担割合を拡大し、医療保険財政の安定化を図る。また、ICTの活用や医療機関の連携強化により質の高い医療を効率的に提供できる体制を築く。

<介護>

介護給付費における税負担割合の拡大と給付の重点化により、介護保険財政の安定化を図る。

<年金>

基礎年金国庫負担2分の1の安定財源を確保し、その後税負担割合を段階的に引き上げる。また、世代間の公平性を保つため、給付額調整の仕組み(マクロ経済スライド)を見直す。

<子育て支援>

待機児童解消を最重要課題とし、子ども手当については、所得制限を導入する。子育て支援にかかわる特別会計の創設は望ましくない。
また、雇用の多様化・流動化に対応したセーフティーネットのあり方については現実性と実行可能性を考慮すべきとし、自助・自己選択を支援する施策については、社会保障関連産業の育成を挙げている。

次に、改革の具体的なスケジュールを二段階に分けて提案している。

<第一段階(2013年〜15年)>

第一段階では、消費税率をできるだけ速やかに10%まで引き上げ、現役世代の保険料に依存した現行制度を見直し、税負担割合を拡充することによって、高齢者を含め広く国民全体で制度を支えるかたちへ転換する。消費税増税分は基礎年金・高齢者医療・介護・子育て支援策の自然増と税負担割合の引き上げ分に充当する。
このように、安定的な財源確保と社会保障の基盤強化がセットで行われ、国民の納得が得られたところで第二段階へ移行する。

<第二段階(2025年に向けて)>

第二段階では、財政健全化も視野に入れる。社会保障の持続可能性の確保とともに長期債務残高対GDP比を安定的に引き下げていくためには、2020年代半ばまでに、消費税を10%台後半まで引き上げることは避けられない。
しかし、消費税だけではなく、成長率上昇に伴う歳入拡大や雇用環境の改善に伴う税収増、歳出面の重点化、他税目の見直しを含む別途の歳入改革など総合的な取り組みを行う必要がある。

最後に、「一体改革に向けた超党派議論の促進」では、超党派による議論を通じ、社会保障制度の方針や財源をめぐる考え方を共有し、国民に対して目指す給付レベルとその実現に向けた各層の役割を、スケジュールも含めて明示するよう求めている。

提言の全文はホームページ(URL= http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2011/014/index.html )に掲載。

【経済政策本部】
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