日本経団連タイムス No.3035 (2011年3月17日)

BIAC本部の活動に関する報告会を開催


日本経団連は2日、東京・大手町の経団連会館でBIAC(OECD加盟国の経済団体により構成される公式の諮問機関)本部の活動に関する報告会を開催し、BIACの技術、税制・財政、化学物質の各委員会の最近の活動について説明を聞くとともに意見交換した。説明の概要はそれぞれ次のとおり。

BIAC技術委員会の活動=広崎膨太郎委員長(日本電気特別顧問)

2010年のOECD閣僚理事会は、従来と異なり、経済界(BIAC)・労働界双方の代表も直接議論に加わるかたちをとった。成長の源泉に関する議論にはBIACを代表して技術委員長である私が参加し、イノベーションやグリーン成長に関して民間の活力を引き出すような環境整備の重要性を訴えた。OECDが今年5月の閣僚理事会において取りまとめる予定のグリーン成長戦略に関する報告について、BIACからは、研究開発投資促進のための環境整備、グリーン課税に関する慎重な対応、途上国への技術移転を促す新たな枠組みづくり等についてコメントした。

2010年2月にまとめた科学技術政策に関するBIAC要望書では、持続可能な経済発展と雇用創造の源泉として、イノベーションの促進が最優先課題であることを強調、イノベーションを促進する政策枠組みの構築、イノベーションに対するファイナンスの強化等を提言している。今後は、データドリブン・イノベーションの重要性、経済原理を保ちつつ環境技術を途上国へ移転していくための枠組みづくり、課題解決型の技術政策の推進などに取り組む。

BIAC税制・財政委員会の活動=岡田至康副委員長(プライスウォーターハウスクーパース顧問)

OECD移転価格ガイドラインやモデル租税条約等に関するOECD文書に対して、積極的にコメント等を行っている。

移転価格ガイドラインについては、移転価格算定方法に関する基本部分の改正(取引単位営業利益法および利益分割法の重視等)、事業再編に関する規定の追加(事業再編への独立企業原則の適用)についてコメントを行ったほか、2013年中の討議草案作成に向けてOECDが作業を開始した無形資産に関する規定の改正についてもコメントを発出した。

モデル租税条約に関しては、第1条(人的範囲)、第5条(恒久的施設)、第7条(事業所得)、第12条(使用料)、第15条(給与所得)に関する条文の改正あるいはコメンタリーの改定についてコメントを発出した。

その他、OECD多国籍企業行動指針の第III章(情報開示)、第X章(課税)の改訂案についてコメントを提出、OECDと議論を重ねている。また、新興国との対話も実施しており、5月には中国税務当局との対話を行う予定である。

BIAC化学物質委員会の活動=宇和川賢・日本化学工業協会化学品管理部部長

2010年11月開催のOECD化学品・環境政策委員会合同会議では、主要課題として「化学物質と子どもの健康」が取り上げられた。また、ナノ材料、試験ガイドラインの改訂、新規・既存化学物質の有害性調査など、継続課題への対応を協議した。

化学物質と子どもの健康については、日本を含め各国の大規模な疫学調査の進捗状況が紹介されるとともに、子どもの健康に影響する化学物質のリスト策定など、この問題に継続して取り組むことが合意されたが、BIACとしては、リストが風評被害につながることがないよう注意を喚起していく。

ナノ材料に関しては、安全性試験法について取り組むことが承認された。今後ナノ材料に特化した安全性試験ガイドラインの必要性を検討する予定であり、BIACとしては、産業界のコスト負担に配慮した実効的なガイドラインとするよう主張していく。

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なお、意見交換では、グリーン成長戦略の検討などに見られるように、近年、OECDにおいて部局横断的な連携が強化されていることを踏まえ、BIACならびに経団連においても、委員会横断的な連携を強めるべきとの指摘があった。

【国際経済本部】
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