日本経団連タイムス No.3039 (2011年4月21日)

通商戦略に関する提言を発表

−円滑なグローバル・サプライチェーンの構築に向けて


日本経団連は19日、「通商戦略に関する提言」を発表した。東日本大震災による甚大な被害からの復旧と復興が、目下、国内最大の課題であるが、復旧・復興にあたって、国内経済・産業の基盤を再構築するためにも、グローバルな事業展開に必要な円滑なサプライチェーンの構築が必要である。そのために、WTOドーハ・ラウンドの年内妥結やTPP交渉への早期参加は、依然として重要な政策課題であり、わが国は、今後も貿易・投資立国として積極的に通商政策を展開していく必要がある。以上のような基本認識に立って、取りまとめた提言の概要は次のとおり。

■ 通商戦略の基本的考え方

諸外国が成長と雇用の源泉を求めて通商課題に戦略的に取り組むなか、わが国は、特に韓国との競争において不利な状況に置かれており、また、米国を含むアジア太平洋地域9カ国で進行中のTPP交渉にもいまだ参加しておらず、地域経済統合に主導力を発揮できる状況にない。あらためて通商政策の基軸を明確に定め、主体的・戦略的にスピード感を持って推進することが急務である。

通商政策の基軸となるべきものは、円滑なグローバル・サプライチェーンの構築であり、そのためには、同一のルールができる限り広範な国・地域で適用される貿易・投資環境を目指さなければならない。

WTOにおいては、既存のFTA等に盛り込まれた規律を取り込むなど、各種ルールの拡充に取り組む必要がある。これと並行して、EPA等においては、新しい製品・サービス、ビジネスモデルに対応した新たなルールを先導的に導入するとともに、二国間のEPAで規定されたルールの広域化を進めることが重要である。

■ WTOにおけるルールの拡充等

ドーハ・ラウンドの年内妥結を実現させることによってWTO体制への信頼を維持・回復したうえで、従来、必ずしも十分でなかった各種ルールの拡充に取り組む必要がある。

■ EPAのルールの広域化等

わが国の貿易額の上位を占める米国、中国、EUを念頭に、TPP、ASEAN+6、日・EU経済統合協定の3つを通じてルールの広域化を推進する必要がある。特にTPPについては、早期に参加し、積極的に新たなルールづくりに参画すべきである。

■ WTO・EPAを補完する制度基盤の整備

投資協定・租税条約・社会保障協定など投資に関する法的基盤の整備、模倣品・海賊版対策に関する国際ルール・連携の拡充、安全保障貿易管理制度の再構築、貿易の円滑化と安全確保との両立、企業の社会的責任と円滑なサプライチェーンの両立が必要である。

■ 激化するグローバル競争に耐え得る国内改革の推進

貿易・投資の自由化の進展による競争激化に対応すべく、抜本的な国内改革を早急に講じていく必要がある。力強い農業の実現、競争力強化に資する幅広い人材の育成・確保、規制・制度の改革を通じた他国に劣後しない事業環境の整備などに国を挙げて強力に取り組むべきである。

【国際経済本部】
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