日本経団連タイムス No.3042 (2011年5月26日)

「第4期科学技術基本計画」見直しに向け提言

−「安心・安全な国づくり」に資するイノベーション強調


日本経団連の産業技術委員会は4月27日、提言「『第4期科学技術基本計画』の見直しに向けた考え方」を公表した。
東日本大震災の影響により、「第4期科学技術基本計画」の2010年度内の閣議決定は延期され、現在、政府の総合科学技術会議において内容の見直しが行われているところである。提言では、基本計画の見直しに際し、「安心・安全な国づくり」に資するイノベーションの重要性を強調するとともに、できるだけ早期に国の基本計画を開始させるべきと主張。提言の内容は、5月2日に総合科学技術会議より公表された「当面の科学技術政策の運営について」に概ね反映された。
具体的なポイントは次のとおり。

1.「安心・安全イノベーション」の強調

昨年末に取りまとめられた第4期科学技術基本計画の「答申」では、「グリーン」「ライフ」の2大イノベーションを大きな柱として掲げていたが、これに「安心・安全イノベーション」を加え、「3大イノベーション」として強く打ち出すべきである。

2.グリーンイノベーションにおけるエネルギー関連施策の見直し

答申で記されたグリーンイノベーションのエネルギー関連施策について、(1)原子力発電の安全性向上(2)再生可能エネルギーの研究開発の促進(3)省エネルギー技術(節電技術)の研究開発の促進(4)これまで必ずしも注目されてこなかったその他エネルギー技術の発掘および研究開発の促進――の4点を強調したうえで見直すことが肝要である。

3.研究開発の成果の社会への普及促進

これまで蓄積してきた研究開発の成果を社会に普及させることで、国民の理解と支持を得ながら、わが国が直面する課題の解決に資するイノベーションを創出することが重要である。その際、研究開発の初期段階から社会普及までを視野に入れるとともに、コスト低減という観点についても考慮する必要がある。

4.専門家による内外への情報発信および国民の科学技術リテラシーの向上

今回の原子力発電所の事故のような非常事態が発生した場合、現状および対処法等について、専門家が国民に対しわかりやすく情報発信することが重要である。また震災の影響で帰国した留学生・研究者等に対しても的確な情報発信を行うことにより、日本へ呼び戻す必要がある。同時に、国民側の科学技術リテラシー(知識・能力)を向上させることも不可欠である。

5.異分野の研究者同士の連携強化

科学技術の専門分野が細分化されているなか、今回のような非常事態に迅速に対応するためには、同分野の専門家同士のコミュニティーで議論するのみではなく、異分野の専門家同士が常日ごろから連携を取りながら議論できるような体制を整えることが重要である。

6.十分な科学技術関連予算の確保

わが国の科学技術基盤を強化し、震災からの復旧・復興をはじめ、わが国の課題解決に資するイノベーションを促進するためには、未来への投資として十分な科学技術関係予算を確保することが不可欠である。そのためには、答申に盛り込まれた予算目標「政府研究開発投資の対GDP比1%、総額約25兆円」は引き続き掲げ、これを着実に達成することが求められる。

【産業技術本部】
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