日本経団連タイムス No.3042 (2011年5月26日)

スティグソンWBCSD事務総長と懇談

−持続可能な発展に向け、世界の産業界はさらなる役割強化を


WBCSD(持続可能な発展のための世界経済人会議)のビヨン・スティグソン事務総長が5月中旬に来日した。
そこで、立花慶治座長ら、日本経団連環境安全委員会WBCSDタスクフォースのメンバーは12日、東京・大手町の経団連会館で会合を開き、国際的な低炭素化の動向や「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」に向けた展望などで、活発な意見交換を行った。
スティグソン事務総長の発言概要は次のとおり。

■ 「グリーン競争は始まっている」 "The Green Race is on"

まず、東日本大震災による甚大な被害にお悔やみを申しあげたい。日本を襲った災害や中東における政治情勢など、短期的な不安定要因は見られるものの、国際的な資源・エネルギー制約に鑑みれば、長期的には、環境と経済が調和する持続可能な世界へと移行していく趨勢に変わりはない。

実際中国は、今年3月に採択された第12次5カ年計画においてクリーンエネルギー投資への一層の注力を表明し、世界のグリーン競争を主導している。また、韓国やインド、欧州連合(EU)もグリーン成長や低炭素技術の研究開発を推進しているが、政策枠組みを欠く米国は、国際的に後れを取っている。

他方、世界最高水準のエネルギー効率を有する日本は、優れた技術プラットフォームを備えており、今後のイニシアティブが期待される。

■ WBCSDの活動

環境と持続可能な発展を中心的課題ととらえ、課題解決に向け、産業界がリーダーシップを果たすことを目的とするWBCSDでは、(1)開発(2)エネルギー・気候変動(3)エコシステム――の3分野にまたがる産業界の役割に焦点を当て、重点的な取り組みを行っている。

具体的には、水、森林、ビル、セメント、電気製品など多様な分野について、各々関係する多国籍企業によるプロジェクトを立ち上げ、システム全体として、持続可能な消費および価値の連鎖(バリュー・チェーン)を実現すべく、検討を重ねているところである。

■ 来年の「リオ+20」に向けて

1992年にブラジル・リオデジャネイロで開催された地球サミットから20年という節目の年を迎える来年6月、国連は、同じくリオデジャネイロで持続可能な開発会議を開催する。同会議では、「グリーン経済」および「持続可能な発展のグローバルな統治」が主要なテーマとされ、各国の政府、非政府組織などが議論を行う予定である。

この「リオ+20」において、産業界はどのような役割を果たし、持続可能な発展に向け、いかなる支援を行うべきか。

WBCSDとしては、既存の地域ネットワークを有効に活用しながら、排出削減に係る透明性の強化やセクター別アプローチに基づく国ごとの行動計画に取り組んでいく。ただし、気候変動に過度に偏ることなく、短期・長期のバランスが取れた議題設定を行うことが重要であると考えている。

こうした観点も踏まえ、WBCSDは「リオ+20」において、国際商業会議所などと連携し、持続可能な発展に向けた産業界の行動を主導していく。

【環境本部】
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