経団連タイムス No.3044 (2011年6月9日)

第4回グローバル法務戦略セミナーを開催

−インドのジョイントベンチャーをテーマに


講演する高谷氏

日本経団連事業サービスは経団連と連携して、5月30日、東京・大手町の経団連会館で「グローバル法務戦略セミナー(第4回)」を開催した。同セミナーは、森・濱田松本法律事務所の協力のもとに実施しており、今回のテーマは「インドのジョイントベンチャー(JV)」である。
講師の高谷知佐子弁護士の説明は次のとおり。

■ 会社設立手続

インドにおける会社設立の登記申請は、オンライン上で行われるため、比較的短期間でできるが、申請に先立ち、選任される取締役の手書き署名に代わるデジタル署名証書や、当該取締役を識別するための取締役認識番号を取得する必要がある。また、会社登記局より使用商号の承認を得なければならないが、CorporationやInternationalなど特定の語を商号に用いることにより最低授権資本額が変わることに注意が必要である。
登記申請にあたっては、商号や事業目的を記載する基本定款と、会社運営上の事項を記載する付属定款との2種類の提出が求められる。登記申請後、会社登記局により定款審査が行われ、設立証明書が発行される。

■ 外資規制

外国企業による直接投資への規制に関して、商工省産業政策促進局より、“Consolidated FDI Policy”が公表されている。これによると、小売業、宝くじ事業、不動産業等では、外国資本による直接投資が事実上禁止されている。また、銀行、テレコムや産業ライセンスの取得が必要な分野(アルコール飲料の蒸留・醸造、タバコ製造、防衛用電子機器等)などについては、出資割合により、外国投資促進委員会(FIPB)の事前承認が必要となる。それ以外のほとんどの業種については、事前の承認は不要であり、FIPBへの事後的な届出で足りる。

■ 会社のストラクチャー

会社には、株主総会、取締役会、Company Secretary(資本金2000万ルピー以上の会社においてコンプライアンスや文書管理を担当)、監査人(日本の会計監査人に相当)、監査委員会(資本金5000万ルピー以上の公開会社)の設置が求められる。
留意すべき事項として、(1)株主総会の定足数は議決権ベースではなく頭数ベースであること(定款で別の定めをすることも可能)(2)特別決議は4分の3以上の賛成で成立するため、JVのマイノリティーになるのであれば、26%以上の株式の取得を目指すべきこと――が挙げられる。また、取締役会については、(1)3カ月に1回以上開催する必要があり、インド国外での開催も可能であること(2)通達により、ビデオ会議方式での議決権行使も認められていること(3)書面決議も可能であるが、書面決議に参加できるのは決議時点でインド国内にいる取締役のみであること――が挙げられる。

■ JV契約のポイント

JVの契約では、商号や資本金等の基本事項に加え、目的、株主保有割合、各機関の役割・権限、株式譲渡に関する事項、解除事由などについて定めることになる。株式譲渡については、譲渡価格に関する制限に注意が必要である。また、紛争解決手段について規定する際には、インドの裁判手続の利便性は極端に悪いため、香港やシンガポールなど、インド国外での仲裁が望ましい。
なお、JV契約で定めた株主の権利・義務は、定款に記載しない限り相手方に会社法上の強制ができないため、定款への反映は必須である。

【経済基盤本部】
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