経団連タイムス No.3045 (2011年6月16日)

「グローバル人材の育成に向けた提言」公表

−産学官が連携しグローバル人材を育成


経団連(米倉弘昌会長)は14日、「グローバル人材の育成に向けた提言」を公表した。事業活動のグローバル化に伴い、国際ビジネスの現場で活躍できる人材へのニーズが高まっている。世界的にも、優秀な人材の獲得競争が激化するなか、わが国は、グローバル化に対応できる人材の育成面で、他のアジア諸国にも後れを取っている。こうした認識に基づき、グローバル人材の育成に向けて求められる取り組みについて、取りまとめた。

■ グローバル人材に求められる素質・能力

提言ではまず、グローバル人材には、社会人としての基礎的能力に加え、既成概念に捉われずにチャレンジ精神を持ち続ける姿勢や、外国語によるコミュニケーション能力、海外との文化、価値観の差異に対する興味・関心などが求められると指摘した。

■ 産学官が取り組むべき課題

そのうえで、それらの素質や能力を育むため、産学官が取り組むべき課題を整理している。産学が連携して取り組む課題としては、第1に、キャリア・職業教育を挙げている。文科系の学生を中心に、職業意識の低い学生が増えていることから、適切なキャリア・職業教育を実施する必要性を訴えた。第2に、子どもたちや若者の間で、理科・理工系学部離れが進んでいる状況を踏まえ、出前授業や大学での寄附講座の開設などを通じて、企業が学校教育に直接、参加するよう求めた。第3に、大学での学修内容が実社会のニーズを反映していないとの指摘から、産業界が実践的な教育カリキュラムの開発に協力すべきとした。

加えて、内向き志向と言われる学生に対して海外留学を奨励することや、学生が国内外で長期間、ボランティア活動に参加するなど、就職前に多彩な経験が積めるよう、英国等で実施されている“ギャップ・イヤー”の導入をわが国でも検討することを提言した。

一方、大学には、リベラル・アーツ教育の拡充や、世界のリーダーとして活躍する高度人材の育成に向けたリーディング大学院構想への積極的な対応を求めているほか、政府には、“高大接続テスト”の導入等による大学進学者の学力保証や、学生の双方向の交流促進に向けた国際戦略の策定などを求めている。

■ 3つの教育・人材開発プロジェクトを推進

以上の課題に対応するため、経団連は、今後、サンライズ・レポートに基づき、3つの教育・人材開発プロジェクトを推進する。

第1は、会員各社が実施している教育支援プログラムの内容を整理し、経団連のウェブサイトにデータベースを開設して、一般に周知する。

第2は、政府が国際化拠点として認定した13大学と協力し、グローバル人材育成のための大学レベルのモデル・カリキュラムの内容を検討し、実施する。

第3に、13大学の協力を得て、将来、日本企業のグローバルな事業活動を担う意欲を持つ大学生を対象とした奨学金「経団連グローバル人材育成スカラーシップ」を新設する。あわせて、留学帰国生を対象とした合同就職説明会・面接会の開催にも協力する。

これらの活動を通じて、グローバル人材の育成に向けた大学との連携を強化する。

【社会広報本部】
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