経団連タイムス No.3045 (2011年6月16日)

インターネットと新しい日本の出発

−村井・慶應義塾大学教授に説明聞き意見交換/情報通信委員会


経団連は3日、東京・大手町の経団連会館で情報通信委員会(渡辺捷昭委員長、清田瞭共同委員長)を開催し、慶應義塾大学環境情報学部の村井純学部長・教授から「インターネットと新しい日本の出発」と題して説明を聞き、意見交換した。村井教授の説明概要は次のとおり。

■ 東日本大震災でICTが果たした役割

今回の大震災では、携帯電話のインターネット接続が非常に有効な通信手段となった。これは、携帯電話基地局での電源のバックアップ体制と、ほとんどの利用者が毎晩充電した携帯電話を持ち歩く習慣を身に付けていたことの両者が結び付き、電源を確保できたことによる。

震災直後から、インターネット上ではソーシャルネットワーキングサービス(SNS)のような新たなサービスも活躍した。新聞、テレビ、ラジオなども、かねてからインターネットとの連携を進めてきた結果、今回の災害時には、電子版の無料配信や動画配信サイトでのニュース番組配信など迅速な対応が可能となった。また、公共空間でのデジタルサイネージ(電子看板)の活用や、特定のサイトへのアクセス集中の回避技術も用いられ、ICT社会の情報伝達・共有に重要な役割を果たした。

■ 新しい日本の出発のための課題

単なる復興ではなく、新しい日本の出発という視点からは、デジタルデバイド(情報技術を使いこなせる者と使いこなせない者との間に生じる格差)の解消が不可欠である。官・民・学の役割を見直し、今回のような緊急時には地域に根差した大学が各地において情報の取りまとめや発信を行う情報関係責任者となるような、新たな連携体制の整備が必要である。

ICTが現代のクリティカル・インフラストラクチャーであることが、今回の大震災で再認識された。よってこれを支える人材育成の体制整備は急務といえる。

高度ICT立国を担える人材確保のためには、大学入試のセンター試験に情報科目を追加するなどの施策とともに、高度ICT人材の社会的立場が確立するよう、「情報マネージメント学位」を設けるなどの環境整備が必要である。

高度ICT人材の活用や、情報システムにかかわるリスクの定量化による保険制度の整備などを進め、リスクを受け入れながら、発展する新しい日本を構築すべきである。

<意見交換>

続く意見交換では、「高度ICT人材の育成のため産業界からどのような働きかけが有効か」との質問に対し、「経営の観点からICTを活用できる文理融合型の人材が必要である。産学連携により、大学における学問の縦割り構造を横に広げていくことが期待される」といった考えが示された。

【産業技術本部】
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