経団連タイムス No.3046 (2011年6月23日)

「社会保障と税の一体改革に対する意見」公表

−「社会保障と成長」両立の観点から、改革案の問題点を指摘


経団連(米倉弘昌会長)は15日、「社会保障と税の一体改革に対する意見」を公表した。政府・与党において改革案の検討が重ねられるなか、同意見では、消費税を社会保障の安定財源に充てていくという基本的枠組みを評価する一方、社会保障各分野の改革像については、社会保障と成長の両立の観点から多くの課題があると指摘した。

特に、全体を通して「共助」のさらなる拡充が基軸とされており、税だけでなく、社会保険料を通じ、現役世代や企業の負担によって機能強化を図ろうとしている点が最も危惧される。各制度の改革案の問題点は次のとおり。

高齢者医療制度・介護など5点

1.高齢者医療制度・介護

前期高齢者を含む高齢者医療制度への税投入割合の拡大、介護給付費への税投入割合の拡大を図るべきである。
高齢者医療給付費に対する現役世代からの支援金は、高齢化の進展に伴い増え続け、現役世代の医療保険財政を圧迫している。
政府・与党の改革案で言及されている、「高齢者医療制度改革会議取りまとめ」は、さらなる負担を現役世代に求める案であり、被用者保険の持続可能性を一層危ういものとしかねない。

2.非正規労働者に対する社会保険の適用範囲拡大

社会保険の適用拡大によって保険料が急激に上昇し、従業員・事業主ともに大幅な負担増となる業種が存在する。産業や労働市場にとって現実的かつ実現可能性のある制度改革とするよう、議論を深めるべきである。

3.公的年金の支給開始年齢のさらなる引き上げ

現在検討中の65歳までの高齢者雇用政策との整合性の確保および若年者の労働市場への影響を慎重に見極める必要がある。マクロ経済スライドの見直し等の給付抑制策を着実に実施し、高齢者雇用にかかる政府方針を確定させるまで、検討を凍結すべきである。

4.子ども・子育て

「子ども・子育て新システム」の初期費用等にかかる約1兆円の措置のうち、公費は約7000億円にとどまる。差額の3000億円程度についても、全額公費で賄うべきである。
また、官の肥大化、費用徴収の自己目的化につながる特別会計の創設には反対である。

5.効率化・重点化のさらなる検討

限られた財源を有効に活用するため、医療保険における診療行為の標準化と診療情報の共有化を通じた医療費の削減、介護保険における利用者負担のあり方や、要支援・軽度の要介護者への給付の見直し等、給付の効率化・重点化への取り組みを強化すべきである。

以上の5点を踏まえ、経団連としては、今後予定される制度設計の議論においても、適宜必要な意見発信や働きかけを行っていく。

【経済政策本部】
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