経団連タイムス No.3046 (2011年6月23日)

関西会員懇談会を大阪で開催

−震災復興や「新たな日本」創造などめぐり意見を交換


あいさつする米倉会長

経団連は8日、大阪市内で関西会員懇談会を開催した。懇談会には、米倉弘昌会長はじめ評議員会議長、副会長や、関西地区の会員企業代表者約380名が出席し、東日本大震災からの早期復興をはじめわが国が直面する課題について意見交換した。

開会あいさつのなかで米倉会長は、今なお困難な状況にある東日本大震災の被災者の方々にお見舞いの言葉を述べるとともに、経団連総会決議を踏まえた今年度の重点政策課題として、(1)震災からの早期復興(2)新しい日本の創造に向けた成長戦略の着実な実施と雇用創出(3)社会保障と税・財政の一体改革(4)エネルギー・環境政策の再構築(5)EPA(経済連携協定)・FTA(自由貿易協定)を通じた経済統合の推進――の5点を示した。

そのうえで、震災からの早期復興と安心・安全で強靭な「新たな日本」の創造に経済界の総力を挙げるとの決意を示し、関西地区の会員へ「阪神・淡路大震災から復興した経験を基に今回の震災からの復興を支えてほしい」と協力を求めた。

続いて5月26日の定時総会で選任された、小島順彦副会長、勝俣宣夫副会長、大塚陸毅副会長、斎藤勝利副会長、奥正之副会長、宮原耕治副会長、大宮英明副会長の7氏が新任あいさつで抱負を語った。

■ 活動報告

第1部の活動報告では、まず、岩沙弘道副会長が震災復興と経済界の対応について報告。「復興・創生マスタープラン」において被災地域全体を「震災復興特区」として大胆な特例措置を講じることを提案するなど、震災直後からの経団連の取り組みを紹介。さらに会員企業・団体の協力を得て行った被災地支援活動の状況について報告した。

続いて渡辺捷昭副会長が、社会保障と税の一体改革について、経団連では現役世代の社会保険料に過度に依存しない安定的な制度を求めていることを説明するとともに、政府の「社会保障に関する集中検討会議」(議長=菅直人総理大臣)の改革案が示した消費税の10%までの引き上げと社会保障財源化を評価しつつ、改革案の問題点に言及した。

勝俣副会長は、経団連のEPA推進に向けた基本的考え方とTPP(環太平洋連携協定)に関する取り組みについて説明。事業環境の国際的なイコール・フッティング(競争条件の同一化)を確保することの重要性は、震災を経て一層高まっていると指摘。TPPはアジア太平洋地域だけではなくグローバルなルールに発展する可能性があることから、わが国も早期参加に向けて積極的に行動すべきと述べた。

渡文明評議員会議長は、会員企業・団体の協力を得て策定した「電力対策自主行動計画」など、今年夏の電力需給対策への対応を報告。また、今般の震災の影響を踏まえ、「地球温暖化対策税」や「2020年に温室効果ガスを90年比25%削減」という従来の政府のエネルギー・環境政策を見直す必要があることを訴えた。

■ 自由懇談

自由懇談では、関西地区を代表して、パナソニックの松下正幸副会長、日本生命保険の加藤貞男副会長が発言。松下副会長は、今回の震災では関西広域連合加盟県がそれぞれパートナーとなる県を決め被災地支援を行う「カウンターパート支援方式」が成果を上げていることを紹介。そのうえで、道州制を導入して、より現場に権限と財源が移されていれば、住民のニーズを踏まえた復旧・復興事業をもっと迅速に行うことができたと指摘。道州制へのステップとして現在の法制度でも実現可能な広域連合を積極的に進めるべきと述べた。

また、加藤副会長は、震災からの復興にあたっては、国の政策が呼び水になり民間の投資が活性化し、経済成長につながっていくことが重要と述べ、そのためにも政府が復興ビジョンを明確化すること、復興の成功例を全国に横展開すること、投資環境を整備すべきことを訴えた。

これらの発言に対して、西田厚聰副会長は、都道府県の圏域を超える広域で起きた今回の震災を機に、道州制のような広域連携の重要性が浮き彫りになっており、経団連では「震災復興庁」を将来的に道州制につなげていくべきと主張していることを紹介、関西広域連合が成功し将来的に道州制につながるよう支援したいと述べた。また、従来の発想にとどまらず民間の力を活かした震災復興を果たせるよう、PPP(公民連携)による取り組みなど民間のノウハウや資金の活用を国に求めていると説明した。さらに日本全体の底上げを図り、「新たな日本」を創造するための基礎となる産業競争力の強化に向け、政府が新成長戦略を早期に再構築し、実行を再開させることが重要と述べた。

懇談の最後に、関西電力の森詳介会長は、今後の日本経済を考えるうえで、震災からの復興戦略と復興後の中長期の成長戦略双方の視点が必要であり、後者については多様性を持った強い地域がキーワードになると指摘。わが国が直面する諸課題の解決に向け、関西企業・経済界も経団連と協力して力を尽くしていきたいと述べた。

これに対し、米倉会長は総括のなかで、阪神・淡路大震災から復興した関西地域の皆さまの知恵を拝借しながら新たな日本の創造にまい進したいと述べた。

【総務本部】
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