経団連タイムス No.3046 (2011年6月23日)

ポスト京都議定書の国際枠組や気候変動政策

−仏国民議会議員と忌憚のない議論展開


経団連は、フランスの国民議会(日本の衆議院に相当)のベルナール・デフレッセル議員(与党・国民運動連合)とジェローム・ランベール議員(野党・社会党)が来日したのを受けて9日、東京・大手町の経団連会館で会合を開いた。会合には、手塚宏之環境安全委員会国際環境戦略ワーキンググループ座長らが出席し、わが国産業界の温暖化対策やポスト京都議定書の国際枠組などについて、忌憚のない意見交換を行った。

■ 日本産業界の取り組みに理解

冒頭、デフレッセル、ランベール両議員は、「今秋、気候変動問題に係る国家戦略の礎となる報告書を国民議会に提出する予定であるが、その作成にあたり、日本政府や関係機関と意見交換するため来日した」と今回の来日の目的を説明した。

意見交換では、経団連側から、現行の「環境自主行動計画」やポスト京都議定書における「低炭素社会実行計画」を通じた取り組みを詳述したところ、両議員は、自主行動計画の成果(産業・エネルギー転換部門で2009年度CO2排出量が90年度比16.8%減少)に理解を示す一方、オフィスや家庭など民生部門での取り組みが課題と指摘した。

■ ポスト京都の国際枠組をめぐり、意見が対立

争点となったのが2013年以降のポスト京都議定書の国際枠組。

経団連側から、京都議定書が世界の排出量の27%しかカバーしていない構造的な問題を指摘したうえで、「枠組みを実効あるものとするためには、米中を含むすべての主要排出国が責任を持って参加する、単一の枠組みを構築することが重要。いかなるかたちであれ、議定書がいったん延長されれば、米中などが本格参加するモメンタムは著しく低下。現在の枠組みの固定化は、地球温暖化防止に逆行する」として、議定書の第二約束期間設定に強く反対した。

これに対し、両議員は経団連の考えに一定の理解を示しつつも、「京都議定書は排出削減を可能にする唯一の手段」と位置付けており、「法的拘束力を有する京都議定書を継続しなければ、米中ほかの排出削減努力が見込めなくなる」との見解を示した。

そこで、経団連側は、「京都議定書のような法的拘束力を伴う枠組みでは、米中は参加しない。京都の延長線ではなく、日本の省エネ技術なども活用し、低炭素社会と経済成長の両立に関するモデルを示しながら、主体的な取り組みを促す必要がある」と反論した。

連携して取り組む意向表明

■ 原発問題の今後

また、原発問題について、経団連側から、「まずは、事故の早期収束、徹底した原因究明と安全基準見直しを急ぎ、国民の信頼を回復すべき」との考え方を説明したところ、両議員は、「政治経済両面でフランスの最大のパートナーであるドイツは、脱原発へと大きく方向転換したが、フランスの立場は不変。ドイツもフランスの原発による電力を大量に利用している」として、「日本がエネルギー政策をどう転換していくか、見守りたい。日本の役に立てることがあれば知らせてほしい」と連帯して取り組んでいきたいとの意向を表明した。

【環境本部】
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