経団連タイムス No.3050 (2011年7月21日)

今後のわが国の安全保障めぐる課題聞く

−2011年度事業計画など了承/2011年度防衛生産委員会総会


経団連は1日、東京・大手町の経団連会館で防衛生産委員会(大宮英明委員長)の2011年度総会を開催した。同総会では、総会議件等を審議した後、元駐米大使で日本プロフェッショナル野球組織コミッショナーの加藤良三氏から今後のわが国の安全保障をめぐる課題について講演を聞いた。
概要は次のとおり。

■ 総会議件等

2010年度事業報告や収支決算が報告された後、2011年度事業計画(案)や大宮新委員長が就任する役員改選(案)などが審議され了承された。

■ 加藤氏講演

講演する加藤氏

中近東での経験やグローバリゼーションなど

外務省時代、1978から81年にエジプトのカイロに駐在したことが、安全保障を考えるきっかけになった。サダト大統領(当時)がソ連から米国への切り換えを断行し、「パックス・アメリカーナ」(アメリカによる平和)の下、73年以降にアラブとイスラエルの大規模な戦争は起きなくなった。今後はどうだろうか。今後は誰が、どの国家が中東に影響力を持つのが日本にとって望ましいかを考える必要がある。

経済のグローバリゼーションは進んだが、政治の面では主権国家が単位であることは変わっていない。中国やインドをはじめ主権国家は自己主張を強めている。

民主主義は選択を許すレジーム(体制)であり、冷戦の終了で選択を許さない非民主主義のレジームが負けた。民主主義のリーダーには、民意によって選ばれた政治的正当性があり、これが強みのはずである。

これからの日米関係

吉田茂元首相による「吉田ドクトリン」は経済発展に焦点を当て、軍事は軽武装路線をとった。これにより日本は世界第2位の経済大国かつ世界で最も好感度の高い国となった。

しかし、日米同盟には「相互防衛」の基本部分で不十分な面がある。日米同盟を強固に保つために、日本の抑止力、米国の抑止力、日米の共同抑止力の3つの総和を大きくする必要がある。日中関係や日韓関係を良好に保つうえで、日米同盟は必要である。

政治的リーダーシップがあれば、総理レベルで日本の防衛予算を増額する決定ができる。集団的自衛権は本来弱者を守る権利であり、日米でそれをより必要とするのは日本である。現在の武器輸出三原則等は武器禁輸政策であり、紛争防止や平和創造に向けて、武器輸出を原則認めるようにすべき時だ。

■ 意見交換

「経団連は武器輸出三原則等の見直しを提言しているが、欧州と日本の関係はどうすべきか」との質問に対して、加藤氏は、「欧州と装備品が共同生産・開発できる枠組みをつくるべきである。武器輸出三原則等に代わる新しい原則をつくり、米国だけでなくNATOや友好国への武器輸出を原則として認めるべきである」と答えた。

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総会終了後、記念パーティーが開催され、防衛生産委員会のメンバー、国会議員、政府関係者、有識者など約200名が参加した。

【産業技術本部】
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