経団連タイムス No.3053 (2011年9月1日)

震災後のわが国の国際協力のあり方で意見交換

−国際協力委員会


経団連の国際協力委員会(矢野薫委員長)は8月2日、東京・大手町の経団連会館で、佐渡島志郎外務省国際協力局長を招き、震災後のわが国の国際協力のあり方について説明を受けるとともに、意見交換を行った。
佐渡島局長の発言要旨は次のとおり。

■ 震災を機に確認した日本の立ち位置

このたびの大震災に対し、世界163カ国・地域と43の国際機関から支援をいただいた。そのなかには75の途上国も含まれる。日本が戦後築き上げてきた官民のつながりが、これだけ深く根を張っていたということにこの震災を通じてあらためて気づかされた。

わが国の安全と発展は、国際社会の平和と安定、世界市場の成長と自由貿易体制の維持があって初めて実現する。また、開発途上国の安定と発展に貢献することは、結局わが国のビジネス機会の拡大や国益にかなう。

ODAはそれらを実現するための重要な外交手段であり、日本の資源獲得やエネルギー開発、さらにはインフラ・パッケージの海外展開を通じた企業支援にも有効に活用できる。官ができることはビジネス環境の整備を進めることであり、海外における企業活動を下支えしていきたい。

■ 民間資金の活用と官民連携の推進

ODAが伸び悩むなか、民間資金の重要性が増大している。途上国に流れる資金のなかでODAの占める割合は経年的に減ってきており、2010年は3分の1程度である。

アジア開発銀行の予測では、アジアでは2010〜20年までに8兆ドルもの膨大なインフラ需要を見込んでいる。ODAの役割は限定的だが、インフラ整備、制度・人の整備に活用することが重要である。

また、官民連携を促進していくために、民間企業から案件の提案を受け付けている。民間投資のみ、ODAのみでは実現できないものを両方の組み合わせによって実現していこうというものである。

JICA(国際協力機構)の海外投融資については昨年度内に再開し、現在はパイロットアプローチ(試験的実施)の段階まで来ている。

外務省はインフラプロジェクトの専門官を57公館に122名配置しており、大いに活用してほしい。構想段階から相談してほしい。

さらに、円借款の制度改善については、(1)外貨建て借款の導入(2)中進国向けあるいはODA卒業移行国向けの円借款(3)円借款の迅速化――の3つに力を入れていく。

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なお、国際協力委員会では、説明を参考に提言を年内に取りまとめる。

【国際協力本部】
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