経団連タイムス No.3053 (2011年9月1日)

消費財流通の効率化に向けた政府の取り組みで説明を聞く

−流通委員会


経団連の流通委員会(亀井淳委員長)は8月4日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催した。東日本大震災で、いち早く支援物資を提供するなど、国民生活における流通産業の重要性が再認識されるなか、流通委員会では今後、東日本大震災での流通産業の対応を検証しつつ、官民・民民の協力のあり方を含め、消費財流通システムのさらなる機能強化に向けた検討を進めることとしている。当日は、その一環として、経済産業省の深野弘行商務流通審議官(当時)から、消費財流通に関するサプライチェーン改善に向けた政府の取り組みについて説明を聞き、意見交換を行った。

深野審議官は、わが国の消費財流通関連企業の現状について、欧米企業と比べて、メーカーや卸売部門での低収益が目立つと述べ、その要因として、返品や3分の1ルール(商品の製造日から賞味期限までの期間を3分の1ずつに分け、納入期限、販売期限を設けるルール)といった商慣習への対応のほか、多頻度少量配送に伴う積載率の低下などにより、多額のコスト負担が生じていることを指摘。とりわけ、欠品リスクへの対応や、取引先ごとに異なる受発注に係るデータフォーマットへの対応などが求められる卸売業に、そのしわ寄せが生じているとの認識を示した。

そのうえで、こうした課題の解決に向けた政府の取り組みとして、消費財流通関連事業者が中心となり昨年5月に発足させ、経産省も積極的にサポートしている「製配販連携協議会」での検討内容が紹介された。

まず、返品削減に向けた取り組みでは、返品発生の原因として、大量に発注された商品が、「定番カット」と呼ばれる商品改廃時に返品となっていることを指摘。計画的で適切な需要予測に加え、製造者側も定番カットを早期に卸売、小売に通知することが必要との認識を示した。次に、3分の1ルールでは、商品属性に応じて納品期限を細分化するといった、きめ細かい対応が必要であり、模範となる事例を積み上げていきたいと述べた。また、多頻度少量配送については、現在の在庫水準から見て、配送頻度が適正かどうかを再検証すべきであると指摘した。さらに、こうした商慣習の見直しには、製(製造)・配(配送)・販(販売)が、企業の枠を超えてこれまで以上に情報を共有する必要があるとの認識を示し、事業者ごとに手順、フォーマットが異なる現在のシステムから、受発注情報の共通プラットフォームである流通BMS(Business Message Standard)への移行、普及促進に向け、政府としても、具体的なアクションプランの策定やサポート体制の構築を進めていくと述べた。

■ 意見交換

続いて行われた意見交換では、経団連側から、欧州におけるチルド食品を引き合いに、賞味期限一つをとっても、わが国と諸外国とでは考え方が大きく違うことから、グローバル競争の実態も踏まえて、商慣習、法規制のあり方も見直さなければならないといった意見が出た。また、こうした商慣習が出来上がってきた背景には、消費者側の意識のあり方も関係しており、事業者が、消費者とともに、見直しに向けて取り組んでいくことも必要との指摘がなされた。

【産業政策本部】
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