経団連タイムス No.3054 (2011年9月8日)

東海地方経済懇談会を名古屋で開催

−「国難を乗り越え、地域と日本を創造する」テーマに


東海地方経済懇談会であいさつする米倉会長

経団連と中部経済連合会(中経連、三田敏雄会長)と東海商工会議所連合会(東海連、高橋治朗会長)は8月31日、名古屋市内のホテルで「東海地方経済懇談会」を開催した。懇談会には、経団連から米倉弘昌会長はじめ評議員会議長、副会長らが、中経連、東海連からは三田会長、高橋会長はじめ会員約250名が参加し、「国難を乗り越え、地域と日本を創造する」を基本テーマに懇談した。

開会あいさつで東海連の高橋会長は、東海経済が震災以降寸断されたサプライチェーンの復旧に取り組み、経済活動は急速に回復してきたものの、足元の行き過ぎた円高には、野田新首相が早期に対応することが必要と訴えた。東海地域では、航空機産業の生産の本格化が進み、名古屋城もリニューアルされ、さらには平成25年の伊勢神宮の式年遷宮や16年後のリニア新幹線の完成も予定されており、地域間の連携により、産業育成や観光ルートの開発に取り組んでいきたいと語った。

続いてあいさつした経団連の米倉会長は、新政権の誕生に際し、震災復興、円高への対応、成長戦略の実現などの重要課題に対しリーダーシップを発揮して迅速に取り組むことを求め、経団連としても、民主導の力強い経済成長を実現するため、9月半ばを目途に、成長戦略をあらためて取りまとめ、国難に対処していくと述べた。

震災復興と災害に強い地域づくりに向けて

経団連からは、大橋洋治副会長が震災からの早期復興と当面の経済運営について報告。欧米の金融資本市場の動揺や海外経済の減速懸念、行き過ぎた円高は、経済回復シナリオの達成を危うくし、産業空洞化の加速や復興の遅れ、さらには日本の経済成長力の弱体化につながると指摘した。岩沙弘道副会長は震災からの復興を新しい日本の創生につなげることが大切であるとし、「復興・創生マスタープラン」で示すまち、産業、農林水産、観光の復興のあり方について説明。坂根正弘副会長は、今冬・来夏における電力不足の懸念に対応し、安全性が確認された原発の再稼働、災害に強いエネルギー供給体制の構築など、効果的な対策の必要性を訴えた。畔柳信雄副会長は、復興の速度を上げるためには、国から都道府県、都道府県から市町村に権限、財源、人材を思い切って委譲すべきであり、道州制はその究極の姿であると強調した。宮原耕治副会長は、物流ネットワークの強化に向けて、東海地域は日本の物流網の大動脈であり、ミッシングリンクの解消が急がれると指摘。勝俣宣夫副会長は、被災者・被災地支援に向けた、これまでの経団連の支援活動を報告した。

東海側からは、水野耕太郎名古屋商工会議所副会頭が、震災後の東海地域経済の生産はすでに震災前の水準まで戻っているが、円高が、中小企業にとって、輸入部品の増加や組立企業の海外移転に伴う将来の仕事量への不安、自らの海外進出についての悩みを増長させる要因となっていることを指摘。中村捷二中経連副会長は、防災・減災に向けた東海地域の企業の事業継続計画(BCP)策定状況などを報告し、今後は自治体や住民等とも連携して事業継続力強化に取り組むと語った。竹林武一津商工会議所会頭は、東海地震に備えて三重県の産官学が連携して行っている「みえ企業防災等ネットワーク」の活動を紹介し、小林長久中経連副会長は、災害に強い国土づくりの観点から東海地域の道路・鉄道・港湾の多重化(国土のリダンダンシー)が重要と述べた。さらに、東日本大震災への対応として、松下雋中経連副会長から経済再建、地域コミュニティー再生、原子力事故収束に向けた考え方について、上田豪中経連副会長からは復興財源のあり方について、提言の紹介があった。

国際競争に打ち勝つ日本経済の実現に向けて

経団連からは、渡辺捷昭副会長が、6月末に政府が取りまとめた社会保障・税一体改革案について今後の課題を示し、現実的な制度の実現を目指して引き続き取り組みたいと述べた。大宮英明副会長は、中長期的なエネルギー政策の検討にあたっては、科学的、客観的なデータに基づく公平、公正な議論を尽くすべきだと訴え、渡文明評議員会議長は、TPPに向けたこれまでの取り組みを紹介、早期参加のための世論形成が重要と発言した。川村隆副会長は、政府の第4期科学技術基本計画の見直しに対する経団連の取り組みを、奥正之副会長は、消費者法と会社法の見直しに対応した経団連の活動を報告した。

一方、東海側からは、木下光男中経連副会長が、TPP交渉への早期参画と強い農業の育成、自由貿易と農業が両立する法制度の整備を5月に政府に要請したことを報告。古澤武雄岡崎商工会議所会頭は、多様で優れた技術の再発見と新たな可能性に向けて、岡崎ビジネス大賞を創設したことなどを紹介した。小川信也大垣商工会議所会頭は、大垣地区で取り組んでいる産官学連携の具体例として「金型創生技術研究センター」の活動報告を行った。これらの報告に対して、西田厚聰経団連副会長は、東海地域のものづくり産業の発展は日本のものづくり産業の発展そのものであり、法人実効税率の引き下げや貿易投資の一層の自由化等を政府に働きかけることで、ものづくり産業の競争力強化を支援していきたいと発言した。

【総務本部】
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