経団連タイムス No.3055 (2011年9月15日)

オンリーワン企業に学ぶ

−橋本・政策研究大学院大学特任教授が講演/起業創造委員会


経団連は2日、東京・大手町の経団連会館で起業創造委員会(大久保尚武委員長)を開催し、橋本久義・政策研究大学院大学特任教授から、独創的な技術や製品、ビジネスモデルを持つ優れた企業へと成長するための企業経営のあり方について講演を聞き、意見交換を行った。
橋本教授の説明の概要は次のとおり。

■ わが国の今後の成長のカギ

私はこれまで中小企業を中心に3281の企業・工場を訪問した。現場を見学すると、経営者の人徳、創業時の苦労話、売り上げの柱となる製品の移り変わり、技術レベルの向上、消費者ニーズの移り変わりなどがよくわかる。

わが国の景気は、大統領選を翌年に控えた米国の景気回復とともに、十年国債や定額貯金の大量償還などにより、今年大きく回復するはずであった。ところが原発問題と電力不足が待ったをかけた。

さらに中長期的には、日本の製造業が中国とどう折り合いをつけるかがカギとなる。特に、鍛造、プレス、金型、溶接、板金、機械加工、研磨といったわが国企業が持つ独自の技術、製品をわが国に維持していけば、中国の需要を取り込むかたちで日本経済は再び活性化するだろう。

■ オンリーワンで頑張る企業

わが国には、独自の技術や製品、経営によって、市場で大きなシェアを確保している企業がたくさんある。

例えば、東京都江東区の前川製作所は、産業用冷凍機について世界の8、9割を製造している。船に搭載する冷凍機はほぼこの会社のものである。さらに余力を使って食品加工分野に進出し、「チキントータルシステム」という鶏の解体・食肉加工システムを開発し、世界中で売り上げを伸ばしている。

埼玉県入間市の五輪パッキングは、創業社長が中国に研修旅行に出かけた際、中国人通訳に5000万円を渡し、現地工場をつくらせ、それが軌道に乗って現在、深センと蘇州に大工場を構えるまでになっている。

福井市の松浦機械製作所は、工作機械の工具の回転数を従来の10倍以上の速さに高めることに成功した。材料加工の生産性の向上とともに、その副産物として材料を削る精度も格段に高まり、この分野で世界レベルの技術力を誇っている。

大阪府河内長野市の東尾メックは水道や空調の配管に使われる継手を生産している。ベテランの作業員でなくても、また道具がなくてもきちんと結節できる独自の商品を送り出し、市場を確保している。

こうした成功事例を踏まえれば、絶え間ない技術革新、顧客ニーズへの対応、工程管理の徹底、社員のやる気の向上などに着実に取り組むことが、企業の成功、発展のカギになると言える。

◇◇◇

起業創造委員会では、独自のビジネスモデルによって事業を成長させ、市場で高いシェアを確保する企業から、事業の成功の秘訣や今後の事業の展望などについて話を聞き、その結果を報告書にまとめるなどにより、経団連会員に広く情報提供を行う予定である。

【産業政策本部】
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