経団連タイムス No.3056 (2011年9月22日)

提言「経団連成長戦略2011−民間活力の発揮による成長加速に向けて」を公表

−「日本企業の強みの発揮」と「世界との連携」を軸とした成長戦略提示


経団連は16日、提言「経団連成長戦略2011−民間活力の発揮による成長加速に向けて」を取りまとめ、公表した。同提言は、震災後、産業空洞化の危機に直面するわが国が、震災からの復興を越えて、名目3%、実質2%を上回る持続的な経済成長を成し遂げ、豊かな国民生活を実現するための経済政策について取りまとめたものである。概要は次のとおり。

■ 問題意識

わが国経済は、震災後の大きな落ち込みから持ち直しつつあるが、被災地を中心に依然として厳しい状況が続いている。他方、補正予算の編成をはじめとして、政府の復興に向けた取り組みは遅れており、海外経済の減速に伴って急速に円高が進むなど、国内の事業環境は一層悪化している。こうしたなか、産業の空洞化が急速に進むことが懸念されるが、産業の空洞化は、国内の雇用機会の減少や技術水準の低下をもたらすうえ、わが国の中長期的な経済成長の基盤までも毀損する。経済が成長しなければ、新たな雇用は生まれず、所得も伸び悩むなかで、税収の減少により各種の公共サービスは劣化し、国民の生活水準は著しく悪化する。

こうした危機感のもと、今後10年を展望して、名目3%、実質2%を上回る経済成長を実現するための政策を官民挙げて早急に実施する必要がある。

■ 経済成長の道筋

震災後の成長戦略を考えるうえでのポイントは、「日本企業が持つ強みの発揮」と「世界との連携」である。提言では、震災復興への取り組みを経済成長の起爆剤として位置付けつつ、政府は国際的な立地競争力の強化に向けた5つの政策を実施し、企業の自由な活動を後押しするとともに、企業が、エネルギー・環境分野における世界最高水準の技術力など、その強みを活かした4つの取り組みを進めることによって成長を加速させていくというシナリオを描いている。

■ 国際的な立地競争力の強化

まず、政府による国際的な立地競争力の強化に向けた5つの政策としては、(1)エネルギー・環境政策の抜本的見直し(2)デフレ脱却と為替の安定化(3)法人税を含む企業の公的負担の軽減(4)TPP(環太平洋連携協定)をはじめとする高いレベルの経済連携促進(5)労働市場の多様性を踏まえた雇用政策の展開――を挙げている。政府は、これらの政策課題への対応に優先順位付けを行いつつ、スピード感を持って取り組むことが必要である。とりわけ電力供給の安定化、円高への対応、法人実効税率の引き下げ、TPP交渉への早期参加は喫緊の課題である。

■ 成長加速に向けた企業のアクション

一方、企業自らが取り組むべき課題としては、(1)未来都市モデルプロジェクトをはじめとしたイノベーションの加速(2)産業クラスターの形成による競争力強化(3)観光・農業の振興を通じた地域活性化(4)成長するアジアとの一体化――の4つを挙げている。これらの取り組みにより、企業はその強みを発揮し、国内外の需要を獲得することによって、引き続き経済成長の担い手となっていく。

■ 成長持続に不可欠な基盤整備

さらに、民主導の経済成長を持続的なものとしていくためには、(1)社会保障と税・財政の一体改革(2)道州制と「地域主権」改革の実現(3)都市の競争力強化(4)金融・資本市場の機能強化(5)グローバル人材の育成・海外からの受け入れ――といった基盤整備の取り組みを政府が中心となって進めていくことが不可欠である。

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なお、提言の詳細な解説については次号以降、3回に分けて掲載する予定である。

【経済政策本部】
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