経団連タイムス No.3056 (2011年9月22日)

アジア太平洋地域における経済統合の現状と課題聞く

−経済連携推進委員会


経団連は9日、東京・大手町の経団連会館で経済連携推進委員会(大橋洋治委員長、加藤進共同委員長)を開催し、経済産業省の河本雄経済連携交渉官からアジア太平洋地域における経済統合の現状、課題等について説明を聞いた。また当日は、地域経済統合に関する提言の取りまとめに向けた論点整理を行った。

<河本経済連携交渉官説明要旨>

1.地域経済統合の重要性

わが国の人口は中長期的に減少し、市場規模は縮小傾向にあるのに対し、アジアでは大きな市場が成長している。例えば、1990年の世界のGDPに占める日本のシェアは15%、中国のシェアは2%であったのに対し、2030年には日本が6%、中国が25%になるとの試算もある。

そこでわが国としては、アジアと共に成長する観点から経済連携協定を通じて、関税引き下げをはじめとする国内企業の競争力強化、外資制限の緩和等、わが国企業が海外展開する際の環境整備を進める必要がある。世界を開き、国を開く。そのため、日本は国内的にグローバル化に対応しながら、対外的に世界に打って出るべきである。

2.日中韓FTA

昨年11月の経団連提言「日中韓自由貿易協定の早期実現を求める」において言及されているとおり、日本にとっての最大貿易国である中国を含む日中韓FTAの実現が極めて重要である。特にわが国の対中国輸出については、約7割が有税品目であり、電気電子、産業機械、自動車部品等、高関税品目も少なくない。現在、日中韓FTAに関する産官学共同研究が行われており、年内に報告書を取りまとめることになっている。早ければ来年には交渉の開始が合意されるかもしれない。産業界の声を踏まえて、日本としてしっかりと準備をする必要がある。

3.ASEAN+6経済連携協定

ASEAN+6(注)経済連携協定については、2009年10月の東アジア・サミットにおいてASEAN+3(注)経済連携協定とともに検討を開始することが合意された。昨年以降、原産地規則、関税品目表、税関手続、経済協力について作業部会が設置され、政府間で議論が進められている。今年8月のASEAN経済大臣関連会合においては、さらに物品、サービス貿易、投資に関する作業部会の設置を日本と中国とが共同で提案しており、今年の東アジア・サミット(11月、インドネシア)で一定の道筋に合意できることが期待される。東アジア広域経済連携であるASEAN+6は新しい段階に前進している。

(注)ASEAN+6=ASEAN10カ国に日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドを加えた枠組み。ASEAN+3の「3」は日本、中国、韓国の3カ国。

4.TPP

TPP(環太平洋連携協定)は、物品、サービス貿易、投資、競争、知的財産権、人の移動等を含む包括的な協定である。当初、シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイによって交渉が開始されたが、2010年3月には米国が加わり、今年11月のAPEC首脳会議での一定の合意を目指している。締結後も含め、新たな参加国に門戸が開かれているが、参加が遅くなればなるほど交渉の余地が少なくなるので、わが国としても早急に交渉参加について判断する必要がある。

<提言取りまとめの論点整理>

TPP交渉への早期参加、日中韓FTAの交渉開始、ASEAN+6経済連携協定の実現等、APEC規模の地域経済統合の完成に向けた諸論点を整理した。

【国際協力本部】
Copyright © Keidanren