経団連タイムス No.3057 (2011年9月29日)

OECD多国籍企業行動指針改訂に関する説明会を開催

−改訂行動指針へ企業の新たな対応を


説明会には約200名が出席した

経団連は14日、東京・大手町の経団連会館で、1976年に策定され、2000年以来約10年ぶりに改訂されたOECD多国籍企業行動指針(以下、行動指針)に関する説明会を開催した。外務省経済局の清水享経済協力開発機構室長、BIAC(注1)国際投資・多国籍企業委員会の佐久間総一郎副委員長(新日本製鐵執行役員)から、改訂のポイント、企業が留意すべき点等を聞いた。

行動指針は、情報開示、雇用・労使関係、環境など幅広い分野において多国籍企業の責任ある行動を促すべく、その原則と基準を定めたOECDの勧告であり、法的な拘束力はないものの、前回の見直しで個別事例に関する問題解決の仕組みが導入されたこともあり、企業の国際的な事業活動に少なからぬ影響を与えている。

当日は、斎藤勝利OECD諮問委員長の開会あいさつに続いて、清水室長、佐久間副委員長が説明を行った。

■ 改訂のポイント

清水室長は改訂のポイントとして、(1)企業自身の活動が悪影響の一因となっていなくても、取引関係によって、悪影響が自らの事業等に直接的に結び付いている場合には、悪影響を防止・緩和するためにリスクに基づくデュー・ディリジェンス(注2)の実施を求めていること(2)人権に関する章を新設し、人権への悪影響に対処するためにデュー・ディリジェンスの実施を求めていること(3)各国に置かれた連絡窓口(NCP)手続について、目安となる処理期間を設定するなど一層具体化したこと――などを挙げた。

そのうえで、本文で合意できなかった事項等が注釈に記述されており、注釈もあわせて読まなければ抽象的でわかりにくい点を指摘。今回の改訂で大幅に増えた注釈部分が行動指針の解釈にどのような影響を与えるか、今後の実施状況を注視していく必要があるとの認識を示した。また、新興国など非参加国への行動指針の普及を念頭に、サブタイトルとして「Recommendations for Responsible Business Conduct in a Global Context」が追加されたことを紹介、これら諸国の国有企業等との公平な競争条件の確保に向けて、引き続き参加国拡大の必要性を主張していくと述べた。あわせて、わが国として行動指針の実施に積極的に取り組んでいる姿勢をこれまで以上に意識して対外的に示していくことが重要であると強調した。

■ BIACの取り組みと留意点

経済界代表として改訂交渉に関わった佐久間BIAC副委員長は、(1)行動指針を理解するうえでの留意点として、本文の意味を注釈で実質的に変更している箇所があるなど注釈が極めて重要であること(2)行動指針の実施上の留意点として、デュー・ディリジェンス、サプライチェーン、情報開示(役員・幹部情報)、贈賄の防止(少額の円滑化のための支払い)に関する規定ぶり、ならびにNCPに対し問題提起されるリスクの増加――に言及した。

【国際経済本部】
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