経団連タイムス No.3058 (2011年10月6日)

海洋政策の重点課題で説明を聞き意見交換

−海洋開発推進委員会


経団連は9月28日、東京・大手町の経団連会館で、海洋開発推進委員会(元山登雄委員長)を開催した。当日は、内閣官房総合海洋政策本部の小野芳清事務局長から、海洋政策の重点課題について説明を聞くとともに意見交換を行った。
会合の概要は次のとおり。

■ 海賊対策の現状

2008年から海賊事件は急増しているが、これはソマリア沖・アデン湾の海賊事件の発生件数の増加によるものである。同海域での海賊事件は、10年には、世界全体の半数に及ぶ219件になった。日本関係船舶の被害も生じている。

国連海洋法条約は、世界の海に関するルールを定めている。公海上の船には登録国が管轄権を有しており、これを旗国主義という。同条約で旗国主義の唯一の例外となっているのが海賊であり、どの国でも海賊を逮捕することが可能となっている。

日本は、09年7月に施行された海賊対処法で海賊行為を定義し、刑罰も定めている。毎年7月に自衛隊の海賊対処行動の1年間の計画である海賊対処要綱が策定され、内閣総理大臣が承認している。現在、自衛隊の護衛艦2隻と人員約400名の水上部隊、哨戒機「P‐3C」2機と人員約180名の航空部隊が派遣されている。今年6月1日にはジブチに海上自衛隊の新たな活動拠点が整備された。

海賊対策を根本的に解決するには、ソマリア暫定政府の能力向上が不可欠である。そこで、わが国としては、国際機関を通じて、治安向上やインフラ整備に向けた支援、人道支援を行っている。

東南アジアの海賊対策に関しては、04年11月にアジア諸国により「アジア海賊対策地域協定(ReCAAP)」が締結され、情報共有および協力体制が構築されている。

■ 最近の海洋政策の動き

最近の海洋政策の動きとしては、まず、再生可能エネルギーに関して、資源エネルギー庁、環境省、国土交通省が洋上風力発電の技術開発や実証実験等を進めていることが挙げられる。

08年11月にわが国が国連に申請した大陸棚の延長については、国連の大陸棚の限界に関する委員会で審査が続いている。

また、鉱業法が改正され、これまで規制がなかった資源探査に関して許可制度が導入された。同改正法は年明けの施行が見込まれる。

<意見交換>

山脇康・海洋開発推進委員会総合部会長が、海上保安庁職員や自衛隊員の乗船による海賊対策について質問したところ、小野事務局長は、「公的警護の乗船については検討が必要であるが、人員の確保が難しいことなどの問題がある」と答えた。

【産業技術本部】
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