経団連タイムス No.3059 (2011年10月13日)

北海道経済懇談会を札幌で開催

−「新たな日本」の創造に向けて議論


経団連と北海道経済連合会(道経連、近藤龍夫会長)は5日、札幌市内のホテルで「第59回北海道経済懇談会」を開催した。懇談会には、経団連から米倉弘昌会長、渡文明評議員会議長をはじめ副会長らが、道経連からは近藤会長はじめ会員約200名が参加し、「『新たな日本』の創造を目指して」を基本テーマに、活動報告と意見交換を行った。

米倉会長らが参加

開会あいさつのなかで道経連の近藤会長は、北海道の経済情勢について、東日本大震災に伴う下押し圧力が薄れるなかで、持ち直しの動きが見られるとの見方を示した一方、北海道においても水産業や観光分野等にも深刻な影響が出ており、まずは震災からの早期復興と地域経済対策を進めるべきであると指摘した。加えて、中長期的な観点から北海道の強みである農業を確固とした競争力のあるものとするため、産学官に金融も加わり、食クラスター活動を展開しているとの説明があった。

続いてあいさつした経団連の米倉会長は、野田新内閣に対し、震災からの早期復興、行き過ぎた円高への対応、成長戦略の実現等の重要課題に迅速に取り組むよう求めたことを説明した。加えて、昨年12月に「サンライズ・レポート」を発表し具体的なプロジェクトを実行に移していること、経団連として「成長戦略2011」を取りまとめたことを紹介。また、TPP(環太平洋連携協定)実現にあたっては、日本の農業の競争力を強化していくことが必要であるとして、「強い農業づくり」を進めている北海道の取り組みへの期待を示した。

■ 活動報告

第1部の活動報告では、経団連から、斎藤勝利副会長が、立地競争力の強化に向けて、(1)エネルギー・環境政策の見直し(2)デフレ脱却と為替の安定化(3)法人税を含む企業の公的負担の軽減(4)TPPなど高いレベルの経済連携の促進(5)労働市場の多様性を踏まえた雇用政策の展開――などを政府に求めたことを報告。渡辺捷昭副会長が、経済活力の向上と国民生活の安定を両立させる、社会保障と税・財政の一体改革の実現に向けた取り組みを説明した。渡評議員会議長は、ポスト京都議定書の新たな国際枠組の構築に向けて、現在行われているエネルギー政策の見直しに合わせて、国際的公平性、実現可能性、国民負担の妥当性などの観点から温室効果ガス削減の中期目標を見直すべきと指摘し、あわせて大宮英明副会長が、今後のエネルギー政策について安全性を大前提に、安定供給と経済性により重点をおいてエネルギーのベストミックスを考えていくよう政府に求めたことを報告した。また、奥正之副会長は、現在進められている消費者法、会社法をめぐる議論について、検討の状況や経団連の取り組みについて説明した。

一方、道経連からは、横山清副会長が、リスク分散の観点から北海道への国内産業の再配置等を検討してほしいと呼びかけ、林光繁副会長が、道内で展開している食クラスター活動について成功事例が生まれていることなどについて紹介した。

■ 意見交換

第2部の意見交換では道経連から、(1)被災地復興に向けての課題(坂本眞一副会長)(2)生産拠点等の分散化・複線化と北海道への期待(田中義克常任理事)(3)「災害に強い地域づくり」を支える社会資本整備(北村潤一郎常任理事)(4)経済再生と地方対策(横内龍三副会長)(5)今後の国と地方のあり方(山口博司副会長)(6)貿易自由化とわが国の農業の強化(堰八義博副会長)――の6点について質問があった。

これに対して経団連は、(1)第三次補正予算の迅速な編成・成立に加え、復興庁の設置や復興特区の実現(岩沙弘道副会長)(2)海外調達も視野に入れてサプライチェーンの再構築が行われているなか、国内に生産拠点を維持していくための技術力やコスト力、物流の利便性の向上(西田厚聰副会長)(3)災害時の代替路の確保や他のモード(手段)との連携体制の構築、そのために必要なコストの検討(宮原耕治副会長)(4)地域活性化のため観光振興、農商工連携・6次産業化による農業の競争力強化(大橋洋治副会長)(5)北海道が対象となっている道州制特区推進法の活用と特区の要件緩和(畔柳信雄副会長)(6)TPPの参加交渉を機会に農業の競争力強化に向けた政策の構築(勝俣宣夫副会長)(7)法人の農業参入の推進による経営の大規模化と新規就農者の増加による生産性の向上(三浦惺副会長)――が必要と応じた。

◇◇◇

懇談会に出席した経団連首脳は翌6日、札幌近郊の新篠津村で花卉栽培農家や大規模稲作農家などを視察するとともに、「JA新しのつ」を訪問、飛田稔章JA北海道中央会会長、宮田勇同会顧問、東出輝一新篠津村長らと意見交換を行った。

「収益性の高い花卉(アルストロメリア)の栽培
により経営の安定を図っている」と説明する若松
三千彦氏(右)と米倉会長ら(6日、新篠津村で)
【総務本部】
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