経団連タイムス No.3060 (2011年10月20日)

提言「今後の日本を支える高度ICT人材の育成に向けて〜改めて産学官連携の強化を求める」公表


経団連は18日、提言「今後の日本を支える高度ICT人材の育成に向けて〜改めて産学官連携の強化を求める」を公表した。経団連では産学官連携による高度ICT人材の育成を求め、拠点大学院と人材育成支援プロジェクトを実施してきた。提言では、昨今の環境変化を踏まえ、今後の日本を支える高度ICT人材の育成に向けた産学官の連携強化についてあらためて提言した。概要は次のとおり。

■ 高度ICT人材育成の必要性

ICTは、インターネットの普及等により、社会全体をつなぐ新たな神経網とも言える存在となっている。震災からの復旧・復興などの社会的課題の解決、インターネット社会における巨大なデータ処理による新たな価値や新産業の創出に向け、高度ICT人材の育成が急務である。

■ 企業が求める高度ICT人材像

企業の業務プロセス全体を把握しながらICTを利活用し、システム設計のみならず、全体最適をデザインできるより質の高い、利活用を担う人材の育成が求められる。また、さまざまな情報、機器、ヒトの融合による新しい社会の創造に向けて、ICTを利活用した変革を牽引していくリーダー人材も必要である。

■ 産業界のこれまでのICT人材育成支援活動と課題

経団連は、2005年と07年に高度ICT人材育成に関する提言を取りまとめ、筑波大学、九州大学と重点的に連携を図りながら、企業講師派遣、プロジェクト遂行による実習、インターンシップ受け入れ等、実践的教育による人材育成支援を続けてきた。支援活動は、学生や就職先企業からも高評価を得ている。一方で、こうした活動を中長期的に継続して、多くの大学に拡大していくためには、支援活動にかかる経費の確保、教育ノウハウの蓄積・普及が課題となっている。

■ 高度ICT人材育成のための具体策

高度ICT人材の最も重要な育成の場である大学・大学院では、研究成果のみならず、「高度人材育成」が評価され、大学や学生、産業界などすべての関係者にメリットが生ずる好循環を確立することが重要である。

大学・大学院は、(1)これまで産業界の支援により行われてきた実践的教育を、さらに多くの大学や大学院へ普及させていく(2)ビジネスや社会システム全体を俯瞰し、ICTを用いてイノベーションの実現、新たな社会システムのデザインを担うリーダー人材育成教育を強化する――という2つの方向で大学・大学院教育を充実させる必要がある。後者について経団連は、東京大学大学院情報理工学系研究科と連携を図るワーキンググループを発足させ、共同カリキュラムの作成などの具体的な検討を始めている。

また、政府としては、高度ICT人材育成の社会的な意義を踏まえ、十分な予算措置を講じることが必要である。そのほか、実践的教育資産の蓄積や普及、評価・改善を継続的に行う拠点を構築することが求められる。

産業界としては、企業講師の派遣やインターンシップの受け入れなどのほか、大学・大学院における取得講座内容や成績を重視・評価した採用活動、入社後の継続的教育やキャリアプランの充実などの取り組みをしていくことが重要である。

【産業技術本部】
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