経団連タイムス No.3060 (2011年10月20日)

片山前総務相、峰崎内閣官房参与迎え地方税・財政のあり方で論議

−21世紀政策研究所が第83回シンポジウム


税制抜本改革と地方税・財政のあり方で
論議した21世紀政策研究所のシンポジウム

経団連の21世紀政策研究所(米倉弘昌会長、森田富治郎理事長)は6日、東京・大手町の経団連会館で、第83回シンポジウム「税制抜本改革と地方税・財政のあり方−グローバル化と両立する地方分権をいかにして進めるか」を開催した。シンポジウムでは、同研究所がこの1年取り組んできた研究プロジェクト「税制抜本改革と地方税・交付税制度のあり方」の成果を発表するとともに、地方税・財政の改革に向けての諸課題についてパネルディスカッションを行った。

まず、来賓の片山善博慶應義塾大学法学部教授(前総務大臣)が、「地方税・財政改革の課題」と題して基調講演。地方財政は費用を住民で分かち合うことが基本であるとしたうえで、夕張市の破綻原因(負担を考慮しない事業、国から容易に資金調達できる仕組み、チェック機関の機能不全、自治体金融における金融機関のリスク感覚の欠落、住民の無関心)は他の自治体にも多かれ少なかれ当てはまり、地方自治の確立にはこうした問題の解決が不可欠であると指摘した。

続いて、同研究所研究主幹の森信茂樹中央大学法科大学院教授が、「地方税・財政から見た我が国経済の課題」と題して今回の研究目的や研究成果について報告した。森信教授は、経済のグローバル化・空洞化への対応と地方の安定財源確保という2つの目的を達成するために、法人2税(事業税・住民税)の縮小・撤廃を中心とした地方税改革が必要であることを説明。法人2税を地方消費税に置き換えていくことが望まれるが、社会保障・税の一体改革成案では消費税の引き上げ分は社会保障に充当されることになっていることを踏まえると、当面、国税を含めたかたちでの抜本改革は難しい課題であるとの見解を示した。一方、地方税体系のなかで行える改革として、課税ベースを拡大して法人事業税の外形標準化を進めるといった選択肢も考えられるとした。

パネルディスカッションでは、森信教授をモデレーターとして、同研究所研究会の委員である田近栄治一橋大学国際・公共政策大学院教授、土居丈朗慶應義塾大学経済学部教授、佐藤主光一橋大学経済学研究科・政策大学院教授に、片山教授、峰崎直樹内閣官房参与、鈴木英伸東レ経理部税務担当部長も加わり、活発な議論が展開された。

地方税改革では、個人住民税・固定資産税といった基幹税を充実させていくことが基本である点や法人2税を地方消費税に置き換えていくという方向性について意見が一致するとともに、法人事業税の外形標準課税化の是非、税制改革への国民の理解の確保等をめぐって種々議論が行われた。

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シンポジウムでの議論の詳細については、21世紀政策研究所新書として刊行予定である。

【21世紀政策研究所】
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