経団連タイムス No.3062 (2011年11月3日)

最新のロシア情勢・日ロ経済関係の展望

−フリステンコ産業貿易相から聞く/日本ロシア経済委員会


フリステンコ産業貿易相(左)と岡委員長

経団連は10月24日、東京・大手町の経団連会館で日本ロシア経済委員会(岡素之委員長)を開催し、ロシア連邦のヴィクトル・ボリソヴィチ・フリステンコ産業貿易大臣から、最新のロシアの経済情勢やわが国との経済関係の展望などについて聞いた。フリステンコ大臣の説明は次のとおり。

ロシア経済は堅調

ロシア経済は堅調である。今年のGDP成長率は4%、インフレ率は史上最低の7%と予測されている。第3四半期までの貿易収支は1500億ドルの黒字であった。公的債務残高はGDPの10%、外貨・金準備高は5200億ドルとなっている。失業者数は年初より120万人減少し、業種によっては人手不足が生じている。保守的な油価に基づき編成した国家予算も黒字を確保しており、健全である。

製造業の振興を推進・農業ビジネスなども有望

政府と経済界は協力し、長期発展計画を策定した。これにより、官民パートナーシップ(PPP)を活用して自動車、造船、航空機、冶金、化学、医療機器、医薬品などの製造業を発展させようとしており、徐々に成果を上げている。農業ビジネスや小売業も順調に成長している。消費者市場も育っており、金融も安定している。

日ロ経済関係は順調に拡大

最近の日ロ経済関係は、あらゆる分野で活発化している。この10年で両国の経済交流規模は約10倍となり、例えばサハリン2による油・ガス田開発など、困難と言われた幾つもの案件が完成した。

ロシアの対日輸出は資源偏重型であり、日本の対ロ輸出は機械やハイテク製品を中心に技術偏重型であるが、最近ではロシアから日本向けLNGの輸出が開始されるなど高付加価値化に向けた新しい動きも見られる。今後、新たなビジネスの可能性は多いと考えている。

二国間経済交流の拡大と多様化に向けて

日本企業のロシアにおける活動の中心のひとつは欧露部であるが、来年のウラジオストクAPECに向けて開発が進む極東地域では、自動車分野における協力の可能性が高まっている。これを実現するために、同地域の港湾や鉄道などの輸送インフラを整備する必要があり、また、法律の運用面での改善を進めなければならない。

ロシアは、経済の近代化とイノベーションの促進に取り組んでおり、日本との経済交流を一層拡大し、多様化したい。そのために、双方が強い意志を持ち、政府や企業等の関係者が、あらゆる機会を通じて率直な対話を継続していくことに期待したい。

【国際経済本部】
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