経団連タイムス No.3063 (2011年11月10日)

関西企業倫理セミナーを開催

−「企業倫理の徹底とCSR経営の推進」水尾駿河台大学教授が講演


講演する水尾教授(壇上右)と吉田部会長(同左)

経団連は「企業倫理月間」のイベントの一環として10月27日、大阪市内で約200名の参加者を得て、関西企業倫理セミナーを開催した。関西での開催は5回目となる。
開会にあたり、経団連企業行動委員会企画部会長の吉田豊次氏から「東日本大震災による被害など厳しい状況にあるが、こうした危機的な状況においてこそ、高い倫理観をもって、社会的責任を果たしていくことが求められる。会員各社においては、昨年改定した企業行動憲章等を参考に、環境変化や社会からの期待等を踏まえて企業行動を再確認するとともに、グループ企業を含めた事業活動全般について総点検をしてほしい」と述べた。

引き続き、駿河台大学経済学部教授・経営倫理実践研究センター上席研究員の水尾順一氏が「企業倫理の徹底とCSR経営の推進」と題する講演を行った。
水尾氏の講演概要は次のとおり。

■ 企業倫理の徹底とCSR経営の推進

不祥事を生み出す非倫理的行動の背景には、(1)悪意(2)無知(3)組織風土(誤った帰属意識・忠誠心)――がある。会社に対する虚偽の忠誠心から、データ改ざんを行うケースが多い。OJT(現場教育)を含む教育・訓練を行い、リーダーが繰り返しメッセージを発することが重要である。教育・訓練を行うことにより、社員等の内面に働きかけ、ひいては組織全体の価値観に影響を及ぼすことができる。

コンプライアンスの推進には、オープンなコミュニケーションができる組織づくりが重要である。社内においては、例えば、メモ用紙に会社のホットラインの電話番号を記載するなど、常に目に触れる意識喚起のコミュニケーションツールを活用して、社員が相談しやすい環境をつくるとよい。企業倫理担当者が社外との交流を図ることも、社会の価値観の変化に気づくことができ、有用である。

また、「サーバント・リーダーシップ」が重要である。「サーバント・リーダーシップ」とは部下支援のリーダーシップを意味し、現場の社員が働きやすくするにはどうしたらよいかを、上司、経営者が考えて行動することである。風通しの良い組織風土をつくるため、自由にものが言える雰囲気づくりや、価値観や目標の共有が求められる。具体的には、自ら社内を歩き回りながら社員に声かけを行ったり、自由な時間を与えて創造の芽を育んだりするなど、部下のやる気を引き出し、働きやすい環境に変えていくことが重要である。

さらに、倫理を押し付けるのではなく、従業員が自発的にコンプライアンスに取り組むようにすべきである。そのため、現場でコンプライアンスを推進する仲間たちを、企業倫理の浸透・定着を進めるキーマンとして選定するとよい。「目線は社員、視点は社会」という心がけが大事である。

最後に、コンプライアンスの推進には経営トップの“熱き想い”が重要である。経営トップが本気でなければ組織は動かない。責任者のコミットメントと現場の改革力との相乗効果によって、組織を変えることができる。

【政治社会本部】
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