経団連タイムス No.3064 (2011年11月17日)

「エネルギー政策に関する第2次提言」公表

−解決すべき3つの重要課題提示
/国民の安全・安心の確保、持続的経済成長、国際社会への貢献


東日本大震災により、わが国のエネルギー供給力が大きく毀損された。こうしたなか政府は、年末までに革新的エネルギー・環境戦略の「基本方針」およびエネルギー基本計画のベストミックスの基本的考えを示すこととしている。
経団連では、7月に「エネルギー政策に関する第1次提言」を公表しているが、以上も含め、今後の政府の検討に産業界の意見が十分反映されるよう15日、あらためて「エネルギー政策に関する第2次提言」を取りまとめ公表した。提言の概要は次のとおり。

政府の検討に産業界の意見反映へ

■ 当面のエネルギー政策について

何よりも最優先すべきは、福島第一原子力発電所の事故の収束である。
今夏は、各地で電力需給がひっ迫したため、停電の回避に向け、企業には非常に大きな負担を伴う結果となった。今後も電力不足が懸念されるが、こうした状態が続けば、国民生活に多大な影響を与えるとともに、国内産業の空洞化をさらに加速させることとなる。
そのため、先般政府が発表した「エネルギー需給安定行動計画」に関連する予算措置や規制緩和を着実に実行すべきである。また、地元自治体との信頼構築を前提に、定期点検終了後、安全性の確認された原発の再稼働が重要である。

■ 中長期のエネルギー政策のあり方

わが国の中長期のエネルギー政策は、(1)国民の安全・安心の確保(2)持続的な経済成長(3)国際社会への貢献――という3つの重要課題の解決を目指して展開すべきである。そのためには、以下の4つの柱が重要になる。

(1)柔軟かつ多様なエネルギー利用計画の策定

将来の技術開発の見通しや、省エネルギー・再生可能エネルギーの普及等については、不確定な要素が多い。そこで、現行のエネルギー基本計画のように、エネルギーや電源の構成について詳細な目標をあらかじめ定めるのではなく、一定の幅を持った柔軟な計画を策定すべきである。
そのうえで、原子力を含め、多様なエネルギーの選択肢を保持し続けることが、リスク分散や資源国に対する交渉力の維持・強化につながる。

(2)安定した電力需給の実現

エネルギー政策の見直しにおいては、震災により毀損したベース電源の確保が重要である。特に原子力は、わが国の電源構成のなかで、これまでベース電源として基幹的な役割を担ってきた。政府は、原子力が今後とも一定の役割を果たせるよう、国民の信頼回復に全力を尽くさなければならない。
再生可能エネルギーの開発・普及は、地球温暖化対策、自然資源の有効活用等の観点から重要である。しかし、風力や太陽光は、コストが高く出力も不安定であることから、とりわけ短・中期的にベース電源等の役割は期待できない。将来的に基幹的な役割を果たすためには、さらなる技術革新を進めることが重要である。
また当面は、化石燃料の役割が大きくなることから、官民協力による積極的な資源外交を進めるべきである。
さらに、省エネ促進のため、省エネ製品の開発・普及に向けた政策支援も必要である。

(3)技術を活かした国際貢献の推進

わが国の化石燃料の高効率利用技術の海外展開に、官民が協力して取り組むことが重要である。
原子力については、今回の事故の教訓を活かして、世界の原発の安全利用に貢献し、地球規模でのエネルギー問題や温暖化問題を解決することが求められる。

(4)温暖化政策とエネルギー政策の一体的推進

今回のエネルギー政策の見直しと整合性のとれたかたちで、わが国の温室効果ガスの中期目標を見直すことが不可欠である。
また、企業から研究開発の原資を奪う地球温暖化対策税の導入には反対である。さらに、再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度の設計にあたっては、国民生活や事業活動に過度な負担とならないようにすべきである。

【環境本部】
Copyright © Keidanren