経団連タイムス No.3066 (2011年12月1日)

貿易手続のあり方めぐり財務省関税局と意見交換

−運輸委員会物流部会


経団連の運輸委員会物流部会(丸山和博部会長)は11月22日、都内のホテルで会合を開催し、貿易手続の円滑化とセキュリティー確保の両立をめぐり、財務省関税局の臼杵芳樹業務課長、菊川正博監視課長との間で意見交換を行った。

■ 積荷情報は出港24時間前までに提出

米国同時多発テロを契機として、物流のセキュリティー確保への関心が国際的に高まるなか、財務省関税局は、今年度から関税・外国為替等審議会の下に貿易円滑化ワーキンググループ(座長=圓川隆夫東京工業大学教授)を設置している。同ワーキンググループでは、貿易円滑化とセキュリティー確保の両立の観点から、通関手続の電子化・ペーパーレス化と保税搬入原則撤廃後のAEO制度(優良輸出入者による通関申告制度)のあり方が検討されているほか、今回特に、積荷情報の事前報告の早期化・詳細化・電子化(いわゆる「出港24時間前ルール」の導入)も新たな方針として発表されることとなっている。

懇談会の席上、両課長から明らかにされたところでは、まず通関手続の電子化については、現在、輸出入者のみの利用に限定されているNACCSシステム(通関情報処理システム)の電子インボイス(仕入書)業務を通関事業者にも開放し、利用促進を図るほか、薬事法をはじめとする他法令手続の電子化推進に向けた関係省庁への働きかけを行うとしている。また、輸出申告で区分1(即時許可)となった場合の関係書類の提出省略、また区分2(書類審査)、区分3(現物検査)となった際のPDF等による必要書類の提出を認めるなど、ペーパーレス化に向けた方向性も示されている。

さらに、AEO制度のあり方では、AEO輸入者による特例申告での担保提供要件の緩和や、輸出許可内容に対する数量・価格等の訂正手続の簡易化を検討していくとしている。

今回、新たに打ち出された出港24時間前ルールについては、WCO(世界税関機構)の「国際貿易の安全確保及び円滑化のためのWCO基準の枠組み」に準拠するかたちで、積荷情報の提出期限を現行の「本邦入港24時間前」から「出港24時間前」に前倒しするほか、報告事項を現在の18項目(品名、数量など)に、貨物簡易説明など17項目を加え35項目とするとともに、その電子的提出を義務付ける方向で検討が進められている。

■ リードタイムの増加に伴う競争力低下を懸念

その後の意見交換で経団連側からは、「出港24時間前ルール」の導入に対して、「リーマンショック後、多くの製造業が過剰在庫に苦しむなか、こうした規制強化の方向性は、リードタイムの短縮、コスト削減に向けた企業のこれまでの取り組みに大きな影響を及ぼす可能性がある」「物流の実態を踏まえた制度設計にすべきであり、とりわけ中国、韓国などとの近海貿易では、例外措置やAEO相互承認を前提とした本ルールの適用除外をはじめ、AEO事業者への緩和措置の導入なども検討すべきである」といった意見が出された。

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財務省関税局では、11月30日を期限として、「積荷情報の事前報告の早期化・詳細化・電子化」をパブリックコメントに付していることから、運輸委員会物流部会としても、「出港24時間前ルール」の影響を最小限に抑えるべく、考え方を取りまとめ、提出することとなった。

【産業政策本部】
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