経団連タイムス No.3068 (2012年1月1日)

COP17に経団連ミッション派遣

−公平で実効ある単一の国際枠組構築に向け政府代表団に働きかけ


国連気候変動枠組条約第17回締約国会議(COP17)が11月28日から12月11日までの約2週間、当初予定より会期を1日以上延長し、南アフリカ第3の都市ダーバンで開催された。京都議定書の約束期間が来年末で終了することから、COP17では、2013年以降の温暖化対策が担保されない、という意味での「空白」をいかに回避するかが大きな争点となり、厳しい交渉が予想された。そこで、経団連では、坂根正弘副会長を団長とし、環境安全委員会の主要メンバーによるミッションを派遣し、経済界の考え方を交渉に反映させるべく、現地で交渉に当たった日本政府代表団への働きかけなどを行った。

経済界の考え方反映へ

■ ダーバン合意の概要

ダーバンで採択された最も重要な決定は、「COP21(2015年)で、すべての国に適用される法的効力を持つ新たな枠組みを採択し、20年から発効させるため、新たな作業部会(「ダーバン・プラットフォーム特別作業部会」)を設置し、その作業をできるだけ早期、遅くとも15年中に終了させる」というものである。経団連は以前から「すべての主要排出国が参加する公平かつ真に実効ある国際枠組を構築すべき」と訴え続けており、米、中、印も対象とする国際枠組に向けた道筋ができたことは、極めて重要な成果である。

一方、途上国や欧州連合(EU)が求めていた2013年以降の京都議定書の第二約束期間設定に関しては、設定は行うものの、期間(5年か8年か)については、次回のCOP18(12年末、於カタール・ドーハ)で決定することとなった。また、日本に関しては、これまで主張してきた「第二約束期間には参加しない」との立場が成果文書上にも反映され、国際的に認知された。

■ 政府代表団に対する経団連の主な働きかけ

現地では、細野豪志環境大臣や北神圭朗経済産業大臣政務官、中野譲外務大臣政務官など政府関係者にそれぞれ何回も面会し、「あくまで米中が責任ある参加をする包括的な枠組みの構築を目指し、一部の国しか対象としない京都議定書の第二約束期間には参加しない」との日本政府方針を引き続き支持する意向を伝えた。

また、国連に提出されているわが国の中期目標(2020年の温室効果ガスを90年比で25%削減)について、東日本大震災を受けたエネルギー・環境戦略の抜本見直しを制約する国際約束がなされないよう、強く働きかけた。

これに対して、細野大臣はじめ日本政府も首尾一貫して、京都議定書の第二約束期間には参加せず、主要国が参加する包括的な枠組みの合意を目指す方針を堅持した。

細野大臣は演説等を通じて、ポスト京都の枠組みのあり方に関する新たな作業部会の設置、さらに、国際協力を通じて地球温暖化対策に取り組むための「世界低炭素成長ビジョン」や「アフリカ・グリーン成長戦略」など、前向きな提案を行い、地球規模の温暖化対策の観点から、建設的に交渉に関与した。また、新しいエネルギー戦略と温暖化対策にかかる検討を表裏一体で進めている日本の実情を説明した。

こうした日本政府の積極的な交渉姿勢は高く評価できる。

■ その他の主な活動と具体的成果

このほか、経団連はCOP会場で「持続可能な発展に向けた日本のイニシアティブ〜技術貢献と新たな枠組み」と題するサイドイベントを行い、坂根副会長から、温暖化対策の国際枠組に関する経団連の見解を説明した。また、内外の有識者・産業界関係者により、アフリカなど途上国における持続可能な発展に向けた日本の技術貢献や国際協力の具体的事例を紹介するとともに、現行の国連CDM(クリーン開発メカニズム)の課題を踏まえた二国間オフセット・メカニズム(注)の推進のあり方などを議論し、温暖化対策における技術の開発・普及の重要性について情報を発信した。さらに、メディアの取材にも積極的に対応し、経団連の地球温暖化防止に向けた取り組みや国際枠組構築に関する基本的考え方について幅広い理解を求めた。

一方、全米商業会議所やビジネスヨーロッパなど主要国の経済団体と連携し、(1)技術メカニズム(2)オフセット(3)緑の気候基金とビジネスの役割(4)貿易投資と競争力(5)気候変動・エネルギー政策へのビジネスの関与――という5つの提言を取りまとめ、関係国政府に働きかけた。

(注)二国間オフセット・メカニズム=二国間協議のもとで、技術移転の結果として実現した排出削減の一部をわが国の貢献分として評価する仕組み

■ COP18に向けて取り組むべきこと

COP17では将来の枠組み構築に向けた決意をはじめ重要な成果が見られたが、具体的な内容については、前述のダーバン・プラットフォーム特別作業部会における作業に委ねられており、引き続き、各国の国益や思惑が交錯する厳しい国際交渉が展開されることが予想される。

経団連としては、2012年末にカタール・ドーハで開催されるCOP18を見据え、引き続き日本政府に対し、すべての主要排出国が参加する公平な枠組みの具体化に向け、リーダーシップを発揮するよう求めていく。

【環境本部】
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