経団連タイムス No.3069 (2012年1月12日)

宇宙産業の海外展開で説明聞く

−宇宙開発利用推進委員会企画部会・宇宙利用部会


経団連は12月16日、東京・大手町の経団連会館で、宇宙開発利用推進委員会企画部会(安井正彰部会長)・宇宙利用部会(西村知典部会長)合同会合を開催した。

当日は、外務省国際協力局の国別開発協力第一課の横山正課長から政府開発援助(ODA)の概要や日・ベトナム間の衛星の円借款契約について、また、経済産業省製造産業局宇宙産業室の武尾伸隆室長補佐から宇宙産業の海外展開に関する政策について説明を聞くとともに、意見交換を行った。なお、経団連は「宇宙基本法に基づく宇宙開発利用の推進に向けた提言」(2011年5月17日)で、宇宙開発利用におけるODAの活用を提言している。会合の概要は次のとおり。

■ ODAの概要、日・ベトナム間の衛星の円借款契約

経済協力には公的資金や民間資金などがあり、公的資金はODAとその他に分けられる。2011年のODA予算は5727億円と、1997年から半減するなか、インフラの輸出振興のための制度改善や官民連携の推進に取り組んでいる。

ODAの形態の一つ目は無償資金協力であり、開発途上国などに資金を贈与する。二つ目は技術協力であり、人材育成や技術移転などの協力を行う。三つ目は有償資金協力(円借款)であり、資金を貸し付け、インフラの建設などを支援する。

昨年10月31日にベトナムのズン首相が来日した際、衛星に関する円借款契約が署名された。これは宇宙分野でODAを活用する初めての事例である。衛星画像情報の活用による災害被害の軽減を目指し、日本からベトナムに地球観測衛星2機を供与するとともに、衛星運用センターの整備などを支援し、事業総額約400億円のうち、今回署名された第1期事業は72億円である。1機目の衛星は2017年、2機目は21年の打ち上げを予定している。

■ 宇宙産業の海外展開に関する政策

衛星やロケットなど宇宙機器産業の市場規模は2591億円であるが、その87%を官需が占めている。こうしたなか、わが国の企業は、2008年にシンガポールおよび台湾、11年にトルコの通信衛星を受注しており、宇宙産業の海外展開が進んでいる。

衛星利用は先進国から発展途上国に広がり、世界の衛星打ち上げは128機(1999〜08年)から260機(09〜18年)に倍増すると予測されている。最大の商業市場は通信・放送衛星であり、近年、地球観測衛星の需要が拡大している。

衛星と人材育成などをパッケージにしたインフラの輸出を推進しており、官民合同ミッションを毎年行っている。12年2月にはフィリピンとバングラデシュへの訪問を予定している。

わが国は、衛星を活用して自然災害のリスク分析とモニタリングをする「ASEAN防災ネットワーク構築構想」を提案している。この契機となったのがODAによるベトナムへの衛星の供与であり、他国にも広げていきたい。

【産業技術本部】
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