経団連タイムス No.3071 (2012年1月26日)

「『会社法制の見直しに関する中間試案』に対する意見」を公表

−中間試案の各論点へ経済界の考え方示す


経団連は24日、「『会社法制の見直しに関する中間試案』に対する意見」を公表した。

政府の法制審議会会社法制部会では、一昨年4月から、企業統治と親子会社の規律を中心に、会社法制の見直しの議論が進められている。今回公表した「意見」は、昨年12月に、同試案がパブリックコメントに付されたことを受けて、取りまとめたものである。

意見の冒頭では、大変厳しい経済環境のなかで経営を続けている企業の活力を削ぎ、経済全体の復興・成長の歩みをも止めかねないような会社法制の見直しは、断じて行うべきではないとの基本認識を明らかにした。そのうえで、中間試案に掲げられた各論点に対する経済界の考え方を示している。主要論点に対する意見の概要は、次のとおり。

社外取締役の選任の義務付け

経営への適正な監督の可否は、社外取締役であるか否かといった形式的な属性ではなく、個々人の資質や倫理観といった実質により決まる。社外取締役は、各社が有用であると判断し、適切な資質等を備えた人材が得られる場合に自主的に選任すべきものであり、一律の義務付けは、各社に適したガバナンス体制の構築を制約する。そのため、義務付けには反対である。

社外取締役等の要件の厳格化

社外取締役や社外監査役には、実質的に活躍し得る有為な人材を広く集める必要がある。それにもかかわらず、従来の社外取締役等の要件に加えて、親会社や取引先関係者等も認めないこととすれば、かえって実効的なガバナンスを阻害することになりかねない。そのため、社外取締役等の要件の厳格化に反対する。

監査・監督委員会設置会社制度の導入

現行の監査役会設置会社と委員会設置会社に加えて、中間試案で掲げられた監査・監督委員会設置会社(監査役、指名委員会および報酬委員会を置かず、社外取締役が中心となる監査・監督委員会が監査や監督機能を担う、新たな機関設計)が認められれば、企業にとっての選択肢が広がり、柔軟なガバナンス体制の構築につながる。そのため、この提案を支持する。制度の構築にあたっては、実務的な利用しやすさへの配慮が不可欠である。

多重代表訴訟制度の創設

多重代表訴訟とは、親会社株主が、親会社にとって重要性の高い完全子会社の取締役に対して株主代表訴訟を起こすことができるという制度である。中間試案では、この制度の創設が提案されているが、これに反対である。現行法でも親会社株主の保護は十分に図られており、実態を見ても、子会社に損害が生じた場合には、子会社取締役に対する適切な責任追及が行われている。他国にもほとんど類を見ない制度であり、濫訴の懸念も払拭できない。

親会社等の責任

親子会社間の取引により子会社が不利益を被った場合、親会社等は当該不利益に相当する額を子会社に支払う義務を負うとの新たな規定を設けることに反対する。現行法でも、子会社少数株主の保護は十分に図られている。親子会社関係は多種多様であり、その互いの利害も容易には判断できないなかで、このような制度が導入されれば、濫訴が生じるおそれが高まり、効率的な企業グループ経営を妨げる。

【経済基盤本部】
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