経団連タイムス No.3071 (2012年1月26日)

安住財務相との懇談会を開催

−平成24年度予算・税制改正、社会保障と税一体改革で


発言する安住財務相

経団連は20日、東京・大手町の経団連会館で安住淳財務大臣との懇談会を開催した。財務省から安住大臣のほか、五十嵐文彦副大臣、藤田幸久副大臣、吉田泉大臣政務官、三谷光男大臣政務官らが、経団連から米倉弘昌会長、渡文明評議員会議長をはじめ、副会長、評議員会副議長、各地方経済団体会長らが出席した。

冒頭、米倉会長は、政府が社会保障・税一体改革素案を取りまとめ、消費税の引き上げに関する時期や幅を具体的に示したことを評価しつつ、債務危機に陥った欧州と比較してもわが国の財政状況は厳しいことを指摘。財政健全化と経済成長の両立に向けて、一層の努力を求めた。

安住財務大臣からは、「震災復興に向けて、1次から3次まで切れ目のない補正予算を組んだが、今後は予算の執行が滞らないよう万全の態勢で臨む」「1000兆円の公債残高を抱える財政状況をこのまま放置すれば、わが国もいつか危機的状況に陥る。次の世代のためにも財政再建への道筋をつけたい」「社会保障・税一体改革については、野田総理自身が税制調査会に出席するなどの努力を重ねて、なんとか素案までたどり着いた。今後は、消費税の5%引き上げが社会保障制度を安定的に運営していくために必要であることを訴えていくとともに、特別会計の見直しや公務員人件費・議員定数の削減など、身を切る取り組みも同時に進めることで、一体改革に対する国民の理解を求めていく」といった発言があった。

<意見交換>

その後、財務省が平成24年度予算・税制改正および社会保障・税一体改革素案について説明。これを受けて渡辺捷昭副会長から、「住宅取得にかかる負担軽減措置の具体化が必要」「消費税と自動車取得税との二重課税、燃料課税との Tax on Tax の解消、印紙税の負担軽減などを早期に実現すべき」「法人実効税率のさらなる引き下げが不可欠」といった発言があった。

斎藤勝利副会長は、まず基礎年金の国庫負担2分の1の財源について、消費税引き上げの第一段階で充当し、年金財政の早期安定化を図る必要性を指摘。あわせて「70歳代前半の窓口負担見直しの先送り」「診療報酬・介護報酬の引き上げ」などがなされ、社会保障給付の効率化・重点化が踏み込み不足と述べた。

これらの意見を受けて安住大臣は、消費税に関して、「住宅購入は他の消費支出と比べ金額のスケールが異なるため、対応を検討したい」「二重課税の問題については、地方税収との兼ね合いがあり、消費者の負担も勘案しながら整理する努力をしたい」と応じた。法人実効税率のさらなる引き下げについては、「世界的にも法人税引き下げ競争を回避すべきとの議論が出てきている。そのような動向や流れを見ながら、平準化を進め、わが国だけが突出して高くならないような方向性で検討したい」と述べた。

また、基礎年金の国庫負担については、消費税率を現行の5%から8%に引き上げる際、約1%をその財源に充てることで、年金に不安を持たれないような制度設計にしたいとの考えを明らかにした。社会保障給付の効率化・重点化については、「ジェネリック医薬品を欧米諸国並みに普及させるなど、取り組み余地は多く、引き続き努力したい」と述べた。さらに、消費税を10%にすることで社会保障支出の穴を埋めたうえで、財政上の余力をつくり、次の時代を担う社会のエンジンを新たにつくる努力をしていきたいとの意向を示した。

【経済政策本部】
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