経団連タイムス No.3074 (2012年2月16日)

関西会員懇談会を大阪で開催

−復興・再生からの新たな飛躍テーマに


関西地区の会員代表者ら約450名
が出席した関西会員懇談会

経団連(米倉弘昌会長)は2日、大阪市内で関西会員懇談会を開催した。懇談会には、米倉会長はじめ評議員会議長、副会長、関西地区の会員企業代表者約450名が出席し、「復興・再生から新たな飛躍へ」をテーマに懇談した。

開会あいさつで米倉会長は、会員各位から被災地の復興に多大な支援・協力を得たことに謝意を表す一方、取り組むべき課題として、(1)震災からの早期復興と日本経済の再生(2)社会保障・税一体改革の早期かつ着実な実現と財政の健全化(3)TPP(環太平洋経済連携協定)をはじめとする高いレベルの経済連携の推進――の3点を挙げた。

そのうえで、関西地区の会員に対して、「日本経済の再生を実現するためには、経済界自らが知恵を絞り、民主導の経済成長を果たす必要がある。企業活力を推進力とする経済成長の実現を全力で進め、本年を復興・再生から新たな飛躍を図る1年としたい」と復興・再生への協力を求めた。

■ 活動報告

第1部の活動報告ではまず、斎藤勝利副会長が成長戦略の推進について報告。実質2%、名目3%の経済成長に向けて、デフレ脱却と為替の安定化、法人税などの負担軽減による国際的な立地競争力の強化とあわせ、未来都市プロジェクトの推進など、企業のアクションの加速化が必要と指摘した。

宮原耕治副会長は、今次労使交渉・協議では、現在の危機的な経営環境を踏まえ、競争力強化策の議論を尽くす姿勢が求められるとし、ベースアップの実施は論外であり、定昇延期・凍結を含めた厳しい交渉を行わざるを得ない場合もあると述べた。

西田厚聰副会長は、今後のエネルギー政策のあり方について、政府が取りまとめた「エネルギー需給安定行動計画」の着実な実行、特に安全性が十分確保された原子力発電所については、地元住民の理解が得られたうえで再稼働することが重要と指摘。中長期的なエネルギー政策では、新しいエネルギー基本計画が現実的なものとなるよう求めた。

渡辺捷昭副会長は、2012年度税制改正について報告したうえで、「社会保障改革本部」での社会保障・税の一体改革の素案は、消費税率の引き上げ時期、幅が盛り込まれたことは前進であると評価しつつ、社会保障について、給付の効率化・重点化と財源の見通しが十分でなく、経済の活力と両立する持続可能な制度への抜本的な改革が必要であることを強調した。

畔柳信雄副会長は、地域が独自の成長戦略により地域経営に取り組むとともに、行財政改革による合理化を進め、成長へとつなげていくためには、道州制導入が不可欠であると指摘。導入に向けて、政治のリーダーシップによる地方分権の推進、広域経済圏確立などに取り組むと説明した。

渡文明評議員会議長は、経団連における観光の振興に向けた取り組みを報告。落ち込んだ観光の機運を盛り上げるため、経団連主催で復興支援シンポジウムを開催する一方、政府の観光立国推進基本計画の見直しに対し、経済界の意見取りまとめに向けた活動も展開していると説明した。

大橋洋治副会長は、アジアの経済成長を持続的なものとするため、アジア域内での経済連携を進める必要性を指摘。2020年を目途にFTAAP(環太平洋自由貿易圏)を完成すること、TPP交渉について速やかに関係各国と協議を進め、わが国の主張を反映させることが重要と述べた。

■ 自由懇談

自由懇談では、関西地区を代表して日立造船の古川実会長兼社長、角和夫阪急電鉄社長が発言。古川会長兼社長は、環境・省エネビジネスをアジアで展開していくことが重要とし、産業発展に起因する水不足等に直面するなか、途上国に対する水インフラの提供に向けた取り組みに力を入れているとの報告があった。

角社長は、イノベーションを生み出し産業活性化へとつなげるため、3府県と3政令市が共同申請した「関西イノベーション国際戦略総合特区」により、国内外から投資を呼び込めるメガリージョンを目指すことが重要と説明。国際物流機能の競争力強化などを訴える一方、エネルギー政策に関しては、原発の再稼働とエネルギー・ベストミックスの議論を分けて検討すべきとした。

こうした発言に対して坂根正弘副会長は、水ビジネスを含め環境・省エネ分野でのわが国の技術をアジアにシステムとして輸出していくことが重要と指摘した。また、温暖化対策について、COP17では、京都議定書の第二約束期間に日本は参加すべきでないといった、経団連の主張が概ね得られたと報告した。

岩沙弘道副会長は、都市の競争力強化に向けて、経団連は未来都市モデルプロジェクトを推進してきたと説明。利便性の高い交通・物流インフラを中長期的な戦略のもとで整備する必要性を指摘するとともに、今後、超高齢化社会の到来を前提としたまちづくりについて検討すると述べた。

懇談の最後に森詳介関西電力会長は、今年は日本にとって正念場の年であると指摘し、今後の日本経済の再生に向けたポイントとして、国際戦略特区の活用、一極集中の是正によるセキュリティーの向上、地に足のついたエネルギー政策の議論を挙げた。

総括した米倉会長は、今年が復興・再生からの新たな飛躍へと踏み出す1年となるよう、関西地区の協力のもと取り組みを進めていくと述べた。

◇◇◇

懇談会後、米倉会長が記者会見を行った。概要は次のとおり。

首都機能分散化

縦割り行政の日本では、各地域に首都機能を分散しても機動性の向上を期待できない。国の機能を明確化し、その役割を必要最小限に限定するとともに、日々の生活に関わる政策の大半は道州と基礎自治体が担うようにすることが望まれる。

大阪都構想

府と市の産業政策一元化など橋下市長の下、積極的に改革を推進する動きが出ているのは良いこと。道州制が推進されればより大きな効果が得られると思う。

【総務本部、社会広報本部】
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