経団連タイムス No.3076 (2012年3月1日)

介護サービスとまちづくり中心に事業者、行政から説明を聞く

−高齢社会対応部会


経団連は2月21日、東京・大手町の経団連会館で、都市・地域政策委員会・住宅政策委員会共管の高齢社会対応部会(渡邊大樹部会長)を開催した。今回はキーノートスピーカーとして、ワタミの介護、厚生労働省、柏市、都市再生機構(UR都市機構)の各関係者から、高齢社会に対応した住まい・まちのあり方について、介護サービスとまちづくりを中心に説明を聞いた。

■ ワタミの介護「介護事業の取り組みと課題」

ワタミの介護は外食チェーンのワタミの子会社として、主に介護付有料老人ホーム事業等を行っている。事業領域は約4兆2千億円規模の介護・福祉市場のうちの3千億円であり、入居者一人ひとりのケアプランに沿って、アクティビティー、健康管理、生活支援、身体介護のサービスを提供している。当初はM&Aにより事業を拡大し、高い入居率を背景に順調に推移している。やはり職員の対応が好調の要因であり、この人と暮らしたいと思われることが重要なので、理念教育を徹底するなど入居者に喜んでもらえるホームをつくっている。ビジネス上の障害や課題としては、ホーム開設の制約、看護師の採用難、入居金の低価格化と規制強化、介護保険報酬の減額がある。

■ 厚生労働省「介護に関する重点施策」

75歳以上人口や認知症高齢者、単身および夫婦のみ世帯の増加、都市部の急速な高齢化を背景に、介護サービスの基盤を強化するため介護保険法の一部を改正した。高齢者が地域で自立した生活を営めるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援サービスが切れ目なく提供される「地域包括ケアシステム」の実現を目指している。30分以内に駆け付けられる中学校区のような範囲を想定して、今住んでいる地域でサービスが受けられるようにしていく。その推進に向け、在宅サービスの充実と施設の重点化、自立型支援サービスの強化と重点化、医療と介護の連携・機能分担、介護人材の確保とサービスの質の向上をポイントとして介護報酬を改定する。

■ 豊四季台団地での取り組み

柏市およびUR都市機構は東京大学と協定を結び、豊四季台団地の再開発事業として長寿社会に向けたまちづくりを進めており、2月には野田総理も視察に訪れるなど全国の注目を集めている。同団地は1964(昭和39)年完成の大規模団地で、30ヘクタールの中に4700戸が集まる。団地内の65歳以上人口の割合は41%で、同人口の要介護者の比率は市内平均よりも低い。これは自立度が下がるとバリアフリー化不足等のために施設や他の地域に転住せざるを得ないためである。そこで、全国に先駆けた試金石として、ソフト面では「在宅医療の推進による地域包括ケアの具現化」と「高齢者の生きがい就労の創生」を行う。前者では主治医・副主治医チームの編成により、かかりつけ医の負担軽減を図るとともに、看護・介護とも連携した地域医療拠点を整備する。後者では農業、生活支援、育児、地域の食の4分野で8事業を行い、民間事業者が高齢者を雇用する。ハード面では2004年から23年の間に3期に分けて団地の建て替え工事を行い、すでに住民交流に向けたコミュニティー広場や散歩道が整備されているほか、子育て支援施設等も整備していく。

【産業政策本部】
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