経団連タイムス No.3076 (2012年3月1日)

わが国の国際平和協力活動に関する説明会開催

−防衛省担当官と意見を交換


経団連は2月22日、東京・大手町の経団連会館で、わが国の国際平和協力活動に関する説明会を開催した。当日は、防衛生産委員会基本問題ワーキンググループの堀謙一主査が司会を務め、防衛省運用企画局国際協力課の齋藤雅一課長から説明を聞き、意見交換を行った。

1991年に初めて海上自衛隊の掃海部隊がペルシャ湾に派遣されて昨年で20年となる。そこで、自衛隊の国際協力開始20周年イベントの一環として、防衛省は関係方面に説明を行っている。齋藤課長の説明概要は次のとおり。

■ 自衛隊による海外での活動の位置付け

1990年にイラクがクウェートに侵攻し、91年に湾岸戦争が起きた。アメリカを中心とする多国籍軍がクウェートを解放した一方で、日本政府は130億ドルを出すにとどまり、人的貢献をしないことに対する反応は冷たかった。そこで、国連の平和維持活動(PKO)に人的貢献ができるようにするため、92年に国際平和協力法(PKO法)を施行した。

2001年に9.11同時多発テロが起きた際には、テロ対策特別措置法を制定して海上自衛隊の補給艦をインド洋に派遣し、03年にアメリカがイラクに武力行使をした際には、イラク特措法を制定して自衛隊がイラクで人道復興支援活動を行った。

07年に防衛庁が防衛省に昇格した際には、自衛隊法を改正して、わが国防衛や公共の秩序維持に加えて周辺事態対応や国際平和協力活動を自衛隊の任務として明確に位置付けた。

民主党政権で初めて策定された10年12月の防衛計画の大綱では、わが国は「国際平和協力活動により積極的に取り組む」「PKO参加5原則等わが国の参加の在り方を検討する」と明記された。PKO参加5原則は、憲法9条との関係で武力行使に至らない枠組みとして策定されたが、自衛隊が参加できる範囲が限定的であるため、検討が求められている。

■ これまでの活動の変遷

自衛隊はこれまでカンボジア国際平和協力業務をはじめ海外で32活動を実施し、延べ約4万人の自衛隊員を派遣した。現在の活動は、ゴラン高原、ハイチ、東ティモール、南スーダンでの国際平和協力業務とソマリア沖・アデン湾の海賊対処である。自衛隊の海外活動については、国内では世論調査の評価が高まっており、海外では潘基文国連事務総長から感謝の言葉が寄せられるなどしている。

■ 自衛隊の国際協力にかかる課題

昨年7月、政府の「PKOの在り方に関する懇談会」は「中間取りまとめ」を公表し、わが国の国際平和協力の新たな理念を提示。わが国は国連PKO等の取り組みを主導し、積極的に役割を果たす責務があるとした。

南スーダンは内戦を経て独立したが、インフラが不足している。国連事務総長からの要請を受けたこともあり、今年1月から、わが国は南スーダンPKOの部隊を順次展開している。

自衛隊に求められる役割は多様化している。地域やグローバルな安全保障環境の構築、世界の平和と安定のため一層積極的な役割を担う自衛隊になるよう努力したい。

【産業技術本部】
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