経団連タイムス No.3077 (2012年3月8日)

九州経済懇談会を福岡で開催

−「新たな日本の創造とアジアとともに発展する九州」テーマに


活動報告や意見交換を行った九州経済懇談会

経団連(米倉弘昌会長)と九州経済連合会(九経連、松尾新吾会長)は2月28日、福岡市内のホテルで「第64回九州経済懇談会」を開催した。懇談会には、経団連から米倉会長はじめ渡文明評議員会議長、副会長らが、九経連からは松尾会長はじめ会員約200名が参加し、「新たな日本の創造とアジアとともに発展する九州」を基本テーマに、両団体の活動報告を行うとともに、意見交換を行った。

開会あいさつで九経連の松尾会長は、「昨年は口蹄疫被害からの復興を願って宮崎での開催を計画していたが、新燃岳の噴火により中止となった。今回は待ちに待った機会」と発言。また、九州一体となった成長の実現に向けた大きな課題として、(1)アジアと一体となった成長(2)農林業等の成長産業化など域内産業のバランスのとれた発展(3)産学連携の推進――を掲げ、九経連の取り組みの概要を紹介するとともに、九経連アジアビジネスセンターを設置することを表明した。

続いてあいさつした経団連の米倉会長は、わが国が直面する課題として、1月16日の「新内閣に望む」で示した、(1)震災からの復興と日本経済の再生(2)社会保障・税一体改革の実現と財政健全化(3)TPP(環太平洋経済連携協定)をはじめとする経済連携の推進――を掲げるとともに、「現下の難局を乗り越え、真の復活・再生を実現するためには政治のリーダーシップと同時に、経済界自らが元気を出し、知恵を絞り、行動を起こす必要がある」との決意を示した。

■ 活動報告

第1部では、経団連、九経連がそれぞれ活動報告を行った。

経団連の斎藤勝利副会長は、現下の経済情勢を踏まえれば、わが国はこのまま弱体化するかどうかの岐路にあり、現在必要なのは「実行」であるとして、米倉会長が参加する「国家戦略会議」などの場を通じて、政府に改革の着実な実施を働きかけていくと説明した。

宮原耕治副会長は、「経営労働政策委員会報告」を基に、産業の空洞化が進む厳しい状況のなか、労使の力で企業存続・発展を目指すとの考え方に立ちつつ、恒常的な総額人件費増を招くベースアップは論外、被災企業などではさらに厳しい交渉をせざるを得ないとの認識を示した。

渡辺捷昭副会長は、2012年度税制改正における活動成果を示すとともに、政府の「社会保障・税の一体改革大綱」の消費税に関する部分を前進と評価とする一方で、不十分な内容にとどまっている社会保障については抜本的な改革を求めるとした。

渡文明評議員会議長は、当面の電力需給ひっ迫に備え、あらゆる電源を総動員するための予算措置と規制改革の実行、中長期的なエネルギーの安定供給とコストの両立、諸外国の経験を踏まえた制度の構築の必要性について指摘した。

岩沙弘道副会長は、経団連の「未来都市モデルプロジェクト」の九州での動向を紹介。加えて、物流の円滑化に向けた輸出入申告・出入港手続の見直し、災害に強い流通システムのあり方等の検討状況を報告した。

大塚陸毅副会長は、震災で一時大きく落ち込んだ観光需要の回復・喚起に向けた取り組みの紹介とともに、2月に公表した「新たな観光立国推進基本計画に向けた提言」について、九州が力を入れる外国人観光客の呼び戻し、地域の広域連携の推進を中心に説明をした。

大橋洋治副会長は、アジアの経済成長を持続的なものとするため、アジア域内での経済連携を進める必要性を指摘。2020年を目途にFTAAP(環太平洋自由貿易圏)を完成すること、TPP交渉について速やかに関係各国と協議を進め、わが国の主張を反映させることが重要と述べた。

また、九経連からは、長尾亜夫副会長が「災害に強い地域づくりとインフラ整備の促進」、福田浩一副会長が「企業の海外展開支援とアジアとの交流拡大」、石原進副会長が「第3次九州観光戦略の推進と九州観光の新たな取り組み」について、それぞれ活動報告を行った。

■ 意見交換

第2部の意見交換では、九経連から、(1)低炭素社会実現に向けた取り組み(2)地方分権の推進と道州制実現に向けた取り組み(3)産学官連携の取り組み(4)産業の国際競争力強化(5)農林水産業への取り組み――について発言・質問があった。

これに対して経団連からは、(1)わが国は環境・エネルギーと成長戦略とを一体的に見直し、国際理解を得る必要がある(坂根正弘副会長)(2)地域活性化と国・地方を通じた行政の合理化のための道州制実現に向け、経団連で国政レベル・全国レベルの議論を喚起する(畔柳信雄副会長)(3)海外に比して小さい科学技術予算の確保を政府に働きかけるとともに、経団連としても産学連携によるグローバル人材育成プログラムを推進する(川村隆副会長)(4)経団連の「未来都市モデルプロジェクト」を通じて九州域内の取り組みを支援するとともに政府に海外並みの事業環境の実現を働きかける(西田厚聰副会長)(5)政府の新しい施策を活用し農地集積による経営の大規模化や新規就農の促進を図ってほしい。九州で動き出した産学官農の連携に期待している(勝俣宣夫副会長)――とのコメントがあった。

【総務本部】
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