経団連タイムス No.3078 (2012年3月15日)

EU・南アの気候変動問題担当幹部と相次いで懇談

−日本産業界の低炭素社会実現に向けた取り組みなどで意見交換


欧州委員会のルンゲ=メッツガー国際・気候戦略局長

国連気候変動交渉において欧州連合(EU)の主席交渉官を務める、欧州委員会気候行動総局のアルトゥール・ルンゲ=メッツガー国際・気候戦略局長がこのほど来日した。

そこで、経団連の立花慶治WBCSDタスクフォース・アドバイザーら環境安全委員会のメンバーは2月28日、東京・大手町の経団連会館で、南アフリカ・ダーバンで昨年末開催された国連気候変動枠組条約第17回締約国会議(COP17)の結果に対する評価や日本産業界の低炭素社会実現に向けた取り組みなどにつき、意見交換を行った。

懇談概要は次のとおり。

■ EUのCOP17に対する評価と次期国際枠組に関するスタンス

ルンゲ=メッツガー局長はCOP17において、各国の温室効果ガス排出削減対策の測定・報告・検証などに関する仕組みや、途上国支援のための「緑の気候基金」の基本設計、途上国の適応策などについて、具体的な進展が見られたことを歓迎した。

また、同局長は、2020年以降の国際枠組に関して、法的文書を作成するための新たなプロセスである「ダーバン・プラットフォーム特別作業部会」が設置され、先進国・途上国を問わずすべての国を対象に、法的効力を持たせる旨(an agreed outcome with legal force)が明記されている点を評価した。

一方、EUが参加、日本が不参加を表明した京都議定書の第二約束期間に関連して、「2020年には単一の法的枠組がつくられるべきであり、複数の枠組みの併存はあってはならない」として、20年以降の第三約束期間の設定は否定した。

■ 低炭素社会実行計画を通じた日本産業界の国際貢献への決意

一方、経団連側からは、国際交渉の議論にかかわらず、産業界が2013年以降に行う主体的かつ積極的な取り組みとして、低炭素社会実行計画を取りまとめている現状を説明した。とりわけ、国内の製造プロセスのみならず、製品・サービスの使用段階を含むライフサイクル全体での削減や途上国への技術移転、さらに革新的技術開発に重点を置き、2050年の世界の温室効果ガス半減に向けて取り組んでいく考えを示した。

あわせて、新興国・途上国の削減ポテンシャルが顕著であることを踏まえ、二国間オフセットメカニズム(注)なども活用して、地球規模のさらなる削減に貢献していく決意を表明するなど、日本産業界の考え方や取り組みに対する理解を求めた。

南アフリカのディセコ気候変動大使

南アフリカ・ダーバンで昨年末開催された国連気候変動枠組条約第17回締約国会議(COP17)において、ヌコアナ=マシャバネ議長(国際関係・協力大臣)を直接補佐する立場にあったムサカト=ディセコ気候変動大使がこのほど来日した。

そこで、経団連環境安全委員会の進藤孝生地球環境部会長は2月29日、東京・大手町の経団連会館で同大使と面会し、日本産業界の低炭素社会実現に向けた取り組みや日南ア協力のあり方などにつき、意見交換を行った。

懇談概要は次のとおり。

■ 気候変動に対する経団連の取り組みおよび日南ア協力関係のあり方

冒頭、進藤部会長から、実効ある温暖化対策として、すべての主要排出国が責任ある参加をする国際枠組の構築が不可欠であり、COP17でその道筋ができたことを歓迎するとともに、南ア政府のリーダーシップに敬意を表した。

また、日本産業界が、自主行動計画により、製造工程から排出されるCO2削減を推進し、世界最高のエネルギー効率を達成している現状を説明。2013年以降も低炭素社会実行計画を進め、わが国の技術を活かした地球規模での排出削減に貢献していく、という決意を示した。

さらに、日南ア協力関係に関しては、日本政府が昨年末に発表した「アフリカ・グリーン成長戦略」に対し、日本産業界として、CO2削減に資する高効率の石炭火力や環境技術面の支援などを通じて、南アのグリーン成長や公害対策に積極的に協力していく旨を強調した。

■ グリーン成長や二国間オフセットに対するアフリカの考え方

進藤部会長の説明を受け、ディセコ大使からは、環境に配慮したインフラ整備を通じた日南ア両国間の互恵的な関係強化に期待が表明された。

また、グリーン成長については、「南アとして違和感はなく、持続可能な成長を果たすためには、成長はグリーンでなければならない」との認識を示しつつも、「アフリカ・グリーン成長戦略は、先進国による新たな規制強化ではないか」と警戒感を持って受け止めている国もある現状を説明し、グリーン成長に関する概念がアフリカ諸国に広く浸透するには時間がかかることに理解を求めた。

さらに、気候変動の国際枠組に関して、日本が京都議定書の第二約束期間への参加に反対を貫いた理由に理解を示す一方、日本の二国間オフセットメカニズム(注)については、「日本が国連のもとでの多国間主義ではなく二国間取り決めに偏重するのではないか」との途上国の懸念を紹介し、アフリカやカリブ小島嶼国などに丁寧に説明していくことが必要と述べた。

(注)二国間オフセットメカニズム=二国間協議のもとで途上国側のニーズを十分勘案しながら省エネ・低炭素化プロジェクトを形成し、技術移転の結果として実現した排出削減の一部をわが国の貢献分として評価する仕組み
【環境本部】
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