経団連タイムス No.3078 (2012年3月15日)

21世紀政策研究所が第88回シンポジウムを開催

−企業の成長と外部連携について中堅企業の経営者を招き議論


パネルディスカッションでは企業経営者らから発言があった

経団連の21世紀政策研究所(米倉弘昌会長、森田富治郎理事長)は2月29日、東京・大手町の経団連会館で、第88回シンポジウム「企業の成長と外部連携−中堅企業から見た生きた事例」を開催した。

同研究所では、日本経済が低成長から脱するために、イノベーションにおける外部連携、特に、高い技術力と機動性を有する中堅企業の外部連携に焦点を当て、研究に取り組んできた。今回のシンポジウムでは、研究の概要を報告するとともに、活発に事業展開している中堅企業の経営者を招いて、外部連携の実態や今後の可能性、課題について議論した。

まず、相澤益男・総合科学技術会議議員が基調講演で、「イノベーションを牽引力に、世界の活力は劇的に変化している。中国・インドなどの新興国が急速に経済成長し、さらにそれを上回る勢いを見せている小さな国々、スイス、スウェーデン、シンガポール、イスラエルなどのニューパワーがある。こうしたなかで日本は、第4期科学技術基本計画にあるとおり、世界の活力と協調して、日本社会の課題や制約をイノベーションで持続的成長へと大転換していくべきである」と指摘した。

続いて、同プロジェクトの概要について、研究会の研究主幹である元橋一之・東京大学大学院工学系研究科教授が、「経営者へのインタビューやアンケート調査を基に検討を進め、3月に報告書を取りまとめる予定である。特定企業へ依存していた中堅・中小企業が今後成長していくためには、新たな顧客の開拓や技術ベースの拡大・汎用化における外部連携が不可欠となっている」と報告した。

また、事例報告した山本製作所の山本勝弘社長は、「異業種交流が今日の経営の柱となっており、オッスイレブンテクニカル協同組合(埼玉県、11社)は35年間続いている。新興国の追い上げで海外進出は不可避であるが、もうかっている企業と組んで積極的に海外進出し、海外情報の入手と顧客の開発への参加を通じて、国内でも発展していく」と力強く報告した。

パネルディスカッションでは、それぞれの経験から次の発言があった。

<大成プラス・成富正徳会長>

世界初の金属とプラスチックを結合させる技術を開発したが、実績がないということで国内大手メーカーには相手にされず、海外メーカーからの引き合いが多かった。産業技術総合研究所に分析してもらって、ようやく国内大手メーカーに採用された。

<HME・服部一彌社長>

産学連携は、時間がかかって有効ではないケースが多い。大企業が諸般の事情から捨てた技術を身軽な中小企業で事業化できる道を開いてほしい。

<ハルナグループ・青木清志代表>

一部上場2社と組むことで、金融機関の融資やベンチャーキャピタルの投資を得て創業することができた。素材・原料の改革では、群馬大学と連携した。

<タニタ・谷田千里社長>

「健康をはかる」メーカーである当社がレストラン事業を展開したのは、たまたま売れたタニタ食堂のレシピ本をヒントに、飲食を通じて国民の健康を図ることが当社のサバイバルになると考えたからである。失敗するなら早い方がいいと思い切った。

<東洋大学経営学部・中野剛治専任講師>

中堅企業は、スピード感のあるトップの意思決定を武器に発展してきた。今後どのようにして大手企業になっていくかが注目される。

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シンポジウムの議論の詳細については、21世紀政策研究所新書としてまとめる予定である。

【21世紀政策研究所】
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