経団連タイムス No.3079 (2012年3月22日)

提言「国際競争力強化に向けた港湾・輸出入諸制度の改革」公表

−制度改革の具体的方策を提示


経団連は21日、提言「国際競争力強化に向けた港湾・輸出入諸制度の改革」を取りまとめ、公表した。

ものづくりとサプライチェーンを国内に維持し続けることが喫緊の課題となるなか、立地競争力強化の一環として、わが国港湾の国際競争力を強化し、国際航路ネットワークにおける拠点としての地位を維持し続けることが重要である。経団連ではこれまで、これら課題に関する産業界の考え方を取りまとめ、その実現を図ってきた。提言は、改革の現状を点検し、あらためて取り組むべき課題を整理したものである。概要は次のとおり。

■ 問題意識

政府は、2007年5月にアジア・ゲートウェイ戦略会議で策定された「貿易手続改革プログラム」にのっとって、港湾・輸出入関連制度の簡素化・効率化に向けたさまざまな取り組みを進めている。昨年3月の関税法改正では、保税搬入原則が見直されるなど、わが国輸出入制度は、改善の方向に大きく前進している。また、将来的な制度のあり方についても、AEO(Authorized Economic Operator)推進官民協議会などが中心となって、精力的な検討が進められている。

その一方では、中国、韓国をはじめとする台頭著しいアジア諸国やEUなどでも、国際競争力強化に向けた制度の抜本的な改革を国家戦略として強力に進めている。こうした状況を踏まえれば、わが国としても、競争環境のイコールフッティングの観点から、今後も改革を不断に進めていかなければならない。

■ 港湾諸制度の改革

港湾制度では、特に、船舶の出入港にかかる手続きに対して、電子申請が認められない、あるいは行政機関によって申請のタイミングが異なるなど、これまでの政府の取り組みが現場に浸透しておらず、煩雑な手続きが依然として解消されていない実態を指摘する声が上がっている。

そのため、提言では、まず、わが国全体としての港湾戦略のグランドデザインを策定するよう求めている。そのうえで、国際コンテナ戦略港湾プログラムを前倒し、個別自治体の垣根を越えた広域港湾管理者を実現すべきとした。さらには、府省共通ポータルを活用して地域ごと・行政機関ごとの独自の制度運用を見直すとともに、土日祝日および夜間の出入港ニーズに対応できる行政機関の体制構築を提言した。

■ 輸出入制度の改革

輸出入制度では、昨年、政府が公表した関税・外国為替等審議会「貿易円滑化ワーキンググループ」の「座長とりまとめ」に、概ね産業界が望ましいと考える方向性に一致する施策が示されている。そこで、この「座長とりまとめ」の実現を求めた。

加えて、AEO相互承認の成果の拡大に向けた諸外国との協議の継続など、AEO事業者にとってのインセンティブを一層高める取り組みを提言した。また、手続き効率化の観点から、関税関係法令以外の法令に基づく手続きについて、行政内部の処理も含めて電子化するとともに、NACCS(Nippon Automated Cargo and Port Consolidated System)へ統合し、真のワンストップサービスを実現すべきとした。

■ 改革推進体制のあり方

こうした改革を真に実効性のあるかたちで実現するためには、政治の強力なリーダーシップのもと、官民一体となった取り組みが重要である。特に、港湾・輸出入諸制度にかかる法令は多岐にわたることから、省庁横断的な取り組みが不可欠である。そこで、省庁間の連携を促す総合調整機能を構築するとともに、民間有識者をメンバーに加え、民間事業者のニーズを把握する体制を整備するよう求めた。

【産業政策本部】
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