月刊・経済Trend 2011年12月号別冊 寄稿〜震災後、企業はどう取り組んだか

生命保険協会

副会長
徳物文雄
(とくぶつ ふみお)

このたびの震災でお亡くなりになった方々に、衷心よりお悔やみを申し上げるとともに、被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

被災された方が一刻も早くご安心いただけるよう最大限の配慮に基づいた対応を行うこと

当協会では地震発生当日、直ちに協会長を本部長とした「大地震対策本部」を設置し、「被災された方が一刻も早く、ご安心いただけるよう最大限の配慮に基づいた対応を行うこと」を基本方針として定め、被災されたお客様へのさまざまな対応を行った。

まず、翌12日には、災害救助法適用に伴い、被災されたお客様のご契約について、保険料払込猶予期間を最大6カ月延長(後に最大9カ月まで再延長を実施)することや、必要書類を一部省略する等、簡易迅速な保険金・給付金のお支払いを行うことを表明した。さらに14日には大地震対策本部の役員会において各種対応策の実施について決議した。決議事項は以下のとおりである。

  1. 地震による免責条項等の不適用の検討依頼
  2. 日本赤十字社に対する義援金三億円の寄贈
  3. 全国紙および地方紙へのお見舞い広告の掲載
  4. 各社におけるお客様からの相談窓口の一覧に関する広告の実施
  5. 被災地への援助に関する事項

そして、15日までに、すべての生命保険会社が、地震による免責条項等は適用せずに災害関係保険金・給付金の全額をお支払いすることを決定するとともに、保険金等の各種支払いに関するガイドラインを策定した。これは給付金請求などにおける簡易取扱基準や、被災後直ちに入院できず、臨時施設等で医師の治療を受け、その後入院した場合は、被災日から入院したものとみなす特別取扱い等について規定をしたものである。

当協会は基本方針のもと、お客さまの置かれた状況に応じて、今優先すべき事項を考え、必要な措置を講じ、業界一丸となってその対応にあたっている。

災害地域生保契約照会制度の発足

今回の震災においては、地震や津波により家屋とも流失・消失し、保険証券等を紛失してしまった結果、加入していた生命保険に関する手掛かりがなくなってしまった方が多くいることが想定された。このため、当協会では4月1日から災害地域生保契約照会制度を新たに発足させ、お客様からのお問い合わせに応える仕組みを構築した。

(図 災害地域生保契約照会制度の仕組み)

図は、災害地域生保契約照会制度の仕組みである。当制度は、今回の震災により被災されたお客様が、加入していた生命保険会社が分からず、保険金の請求を行うことが困難な場合等において、当協会に加盟する生命保険会社に対して契約の有無に関する調査依頼を行うという制度である。生命保険各社が調査を行った結果、契約が特定できた場合には、当該契約を保有する生命保険会社がお客様に連絡し、該当契約がない場合についてはその旨を当協会から連絡する。9月9日時点で照会対象者は6107名、うち調査済み照会対象者が6045名、契約が判明した方が3910名と約65%の方々のご契約が当制度により判明している。

当制度により、各社は今回の震災で生命保険に関する手掛かりを失ったお客様へ、請求のご案内を行うことが可能となった。

確実に保険金をお支払いするための取り組み

今回の震災の規模に鑑み、死亡者等の情報について各社単独では把握することが困難なケースがあるため、当協会は、業界全体で情報を共有するための業界共通データベースを構築した。また、生命保険会社においては、約2万6000名の生命保険募集人や代理店がお客様の安否確認活動を行うほか、アウトバウンドコールの実施やダイレクトメールの送付、出張相談窓口の設置等、各社が持つチャネルやリソースを最大限に活用して、お客様への周知やお手続きのご案内を行っている。

しかしながら、今回の震災では、被保険者のみならず保険金受取人もお亡くなりになっているケースもあり、その場合は保険金請求権者(一般的には法定相続人)を特定する必要がある。そこで、当協会では保険会社からの戸籍謄本や住民票の写し等の交付請求について関係省庁に要望した結果、関係省庁より自治体に連絡文書を発信いただき、保険会社が直接開示請求することが可能となった。

また、行方不明者が膨大な数に上っているが、死亡の確定がなければ死亡保険金を支払えないため、危難失踪宣告の短期化等を関係省庁に要望してきた。その後、6月7日、法務省より戸籍法第八六条第三項に基づく死亡届の簡易取扱いが公表され、行方不明者に係る保険金支払いが進んでいる。

さらに、震災によりご両親を亡くされた未成年者の方も多数に上ることが想定されたことから、当協会は生命保険金を適切にお支払いすること等を目的として、生命保険会社と行政機関・地方弁護士会等の間で情報連携を行うネットワーク、「未成年者生保支援ネットワーク」を6月17日に創設した。

震災からの復興に国を挙げて取り組むなかで、生命保険事業に携わるわれわれも一丸となって、保険金・給付金の確実なお支払いに努め、国民生活の安心を支えるという使命を着実に果たしていく必要がある。また、今後は経済的事情により、保障内容の見直しをご検討されるケースも想定され、契約を続けていただくためのコンサルティングの必要性も高まっている。保険金の支払いと契約の継続、この両面で被災されたお客様への万全の対応を期したい。

(9月26日記)

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